水底
部屋の電気をすべて落とし、青色のちいさな照明だけをつけて眠る。
薄く開けた瞼には、この部屋を取り囲む家具のくろぐろとした影が写る。
ゆらめく青の照明は、静寂をより静かなものへと変質させていた。
ベットの下から、閉じたクローゼットの隙間から、積み上げた本と本との間から、ぬるい水が満ちるような音が聞こえた。
魚のたゆたう気配を感じる。
また壁に頭をぶつけては鱗を落としているのだろう。
背を覆うさまざまな苔は胞子を飛ばし、萌芽している。
時折外を走る車のライトが部屋の中を照らし出す。
それは海の中に差し込む月光のように、白くやわらかな曲線を描き、消えて行った。