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水底

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 真千子は半月前にこの部屋を出た。丁寧に合鍵を白い封筒に包み、流しへ置いて出て行った。
彼女の数少ない衣類と、紫陽花の香りのする石鹸のみ.を持って消えてしまった。いつかの誕生日に送った、陶器で作られた小鳥の置物はそのまま本棚の上に残されていた。

 真千子の髪からはいつも紫陽花の香りがした。
夜、電気をすべて落としてしまうと、その甘やかな香りはより一層高まった。
黒くつややかな真千子の髪は、腰よりも長く、触れると皮膚の上をするりと滑り落ちた。
作品名:水底 作家名:にょす