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水底

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 人魚はゆらゆらと半透明の尾びれをゆらめかせながら座っている。
見ると今朝干して行ったはずの洗濯物もすべて畳まれており、その中の一枚であった横縞模様のキャミソールを身につけていた。腹のあたりに鱗が数枚張り付いている。
「しな子ちゃん、お味噌汁まだあたたかいから、冷めないうちに食べてしまって。」
人魚はそのように言い、すでに料理を食べはじめている。
どの皿からも湯気が立ち上り、なるほどよい匂いがする。
 人魚につられてつい食べた。味付けもよく真似られている。味の薄かったものは少々濃く、また少し濃く作った料理は少々薄く作られていた。かつて母親が作った料理のように思えた。
 ひと口食べると弱いもので、次々に口へと運んだ。
しかしどうしても、なにか判別のつかない白身魚の刺身に手を出すことはできなかった。人魚の方はそれも構わずぱくついている。
作品名:水底 作家名:にょす