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コトコリの書庫

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 プロフェッサー・コトコリは、(「プロフェッサー・コトコリ」と呼ばなければ叱られるので、少々長いがこのようにして呼ぶ。)私の曾祖母の先生なので、もちろん髪の毛は銀色をしている。さすがに長く生きていると毛も薄くなるのでは、と思うのだが、相反してさらさらの髪の毛をしている。長さは耳にかかるかかからないかというほどで、時々端を切ってやるのも我が家の女たちのしきたりであった。
 私が初めてプロフェッサー・コトコリと顔を合わせた時は、同い年の子供ではないのか、と疑ったものだ。
曾祖母の先生をしていたと聞かされても、いまいちピンとこなかった。
私は今年で16になるが、プロフェッサー・コトコリの姿形は出会った頃と変わらない。西日の射す窓際の書き物机がいつもの定位置だ。
ぶかぶかの白衣を着て、木製のおおきな椅子に腰掛け、ぜんまいで動く人形のように小さな手で、分厚い本をめくっている。銀色の髪をかき上げると、大きなアメジストの瞳が覗いた。

 「おはようございます、カンナさん。本日の議題は『内在的景観』について。よろしいかな。」
いつもこのようにして授業が始まる。授業と言ってもノートを取る必要はない。紅茶を飲みながらクッキーを食べて、プロフェッサー・コトコリの話に耳を傾ける、それだけでよかった。もちろんテストなどもない。(ただし、今までのおさらいと言う名目で、突如として質問攻めにされることはある。)

 「さて、『内在的景観』を語るうえで重要になってくること、それは人間、ホモ属の先祖、ホモ・ハビリスやホモ・エレクトス、いわゆる原人の生活環境がどのようなものであったか、ということである。
原人の祖先はアフリカ大陸で生活をしていたと考えられる。その頃は広大な熱帯雨林が大地を覆い、非常に暮らしやすい環境が整っていた。
しかし、ヒマラヤ山脈などで大規模な造山活動が起こると、気候は急変した。以前何枚か写真資料を見せたことがあるとは思いますが、そうしてサハラ砂漠が形成されるに至った・・・」

 プロフェッサー・コトコリの声は少しかすれている。少しかすれた子供の声をしている。小難しい言葉が埃っぽい室内を満たす。

作品名:コトコリの書庫 作家名:にょす