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コトコリの書庫

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 プロフェッサー・コトコリは私の曾祖母の元教師で元恋人だ。
我が家の女たちは皆、プロフェッサー・コトコリに「世の中のなりたち」を習うというしきたりがある。
急勾配な丘の上に根を張る立派な一本の椎の木の根元から、ひっそりと伸び出したきのこのような古ぼけた洋館、それが私たちの教室、コトコリの書庫だった。
 私もしきたりに習い、小学校5年の頃からずっと、毎週木曜日の放課後に、急勾配な丘を、息を切らしながら登り、「世の中のなりたち」の授業を受け続けている。
この書庫へ通い始めた頃はプロフェッサー・コトコリと同じくらいの身長だったが、数年の内にすいすいと追い越した。今では私の方がずいぶん背が高いので、高い場所にある蔵書や剥製を取る係や、電球の取り替え作業なども任されている。
 
書庫の中には古今東西のあらゆる書物が収蔵されている。中にはプロフェッサー・コトコリの身長を裕に越すほど大きな本もあれば、小指の先に乗せてピンセットでページをめくる本もある。
インドの風土病について書かれた本の表紙はつやつやとした赤紫色で、金の糸で細かい刺繍が施されていた。今のところこの書物の装丁がいちばん美しいと思っている。
 文献だけではなく、天上まで届くほど大きな首長ウサギ類の骨格標本や、朱色の翼を四本持つ鳥類の剥製、日に焼けて文字が読み取れなくなったラベルの張られた何かしらの生物のホルマリン漬けなど、おそろしく大量の物が書庫のありとあらゆる空間を埋め尽くしていた。

作品名:コトコリの書庫 作家名:にょす