月の子供
瞼を開けると頭が部屋の外に出ていた。見慣れた街路樹がはるか下でざわめいている。
「ああ、」
ふいに声が出た。どうやら頭のみでも声は発せられるようだった。
「ああ、」
そう言うと、ごう、と風が吹き荒れて、頭を飛ばした。
「ああ、ああ、」
「ああ、ああ、」
声を出す度、一層強い風が巻き起こり、頭をより遠くへと運んだ。
「ああ、」
「ああ、」
「あああ、ああ・・・」
くるくると回転しながら飛ばされてゆく。
視界には夜の空にぽっかりと浮かぶ白すぎる満月と、ちいさくなってゆく家々の屋根が交互に映り、風に飛ばされたあらゆるものが、目に止まらないほどの速さで頭の隣を横切って行った。
街並みがどんどん遠のいてゆく。
ネオンサインが光の粒となって、やがて夜の闇の中に消えて行った。
「ああ・・・」
「ああ、」
ふいに声が出た。どうやら頭のみでも声は発せられるようだった。
「ああ、」
そう言うと、ごう、と風が吹き荒れて、頭を飛ばした。
「ああ、ああ、」
「ああ、ああ、」
声を出す度、一層強い風が巻き起こり、頭をより遠くへと運んだ。
「ああ、」
「ああ、」
「あああ、ああ・・・」
くるくると回転しながら飛ばされてゆく。
視界には夜の空にぽっかりと浮かぶ白すぎる満月と、ちいさくなってゆく家々の屋根が交互に映り、風に飛ばされたあらゆるものが、目に止まらないほどの速さで頭の隣を横切って行った。
街並みがどんどん遠のいてゆく。
ネオンサインが光の粒となって、やがて夜の闇の中に消えて行った。
「ああ・・・」