月の子供
カグヤとシロウの名を知ったのは秋の暮れのことだった。
よく晴れた夜だったので少し外に出ることにした。鳶色の外套を羽織り、煮干しの入った青い袋を持って出た。
満月をぼんやり眺めながら町外れのすすき野を歩いていた。ぽりぽりと音を立てながら煮干しを食べているといつのまにか月の子供等が左右に居た。あたり一面に広がるすすき野を、やわらかな月光が照らしている。
「カグヤがカグヤでシロウはシロウ。」
「シロウがシロウでカグヤはカグヤ。」
お互いを指差し、こちらを見上げながらそんな風に話しはじめた。
「煮干しぽりぽり月の下。」
「ぽりぽり煮干しを月の下。」
「待てど待てども帰らぬを。」
「帰り帰らね街の中。」
歌うように話すのだった。シロウと思われる男の子が口を閉じるとすぐにカグヤと思われる女の子が口を開いて言葉を続けた。くるくると周囲を回りながら、袋の中の煮干しをかすめては、盛んに口に運ぶのだった。
「追いし追いしは白い猫。」
「おいしおいしい煮干しかな。」
そう言い終わると月の子供らはすすきの穂に似た薄金色の髪をふわふわとさせて、月光の届かない竹林の方へと走り去った。
よく晴れた夜だったので少し外に出ることにした。鳶色の外套を羽織り、煮干しの入った青い袋を持って出た。
満月をぼんやり眺めながら町外れのすすき野を歩いていた。ぽりぽりと音を立てながら煮干しを食べているといつのまにか月の子供等が左右に居た。あたり一面に広がるすすき野を、やわらかな月光が照らしている。
「カグヤがカグヤでシロウはシロウ。」
「シロウがシロウでカグヤはカグヤ。」
お互いを指差し、こちらを見上げながらそんな風に話しはじめた。
「煮干しぽりぽり月の下。」
「ぽりぽり煮干しを月の下。」
「待てど待てども帰らぬを。」
「帰り帰らね街の中。」
歌うように話すのだった。シロウと思われる男の子が口を閉じるとすぐにカグヤと思われる女の子が口を開いて言葉を続けた。くるくると周囲を回りながら、袋の中の煮干しをかすめては、盛んに口に運ぶのだった。
「追いし追いしは白い猫。」
「おいしおいしい煮干しかな。」
そう言い終わると月の子供らはすすきの穂に似た薄金色の髪をふわふわとさせて、月光の届かない竹林の方へと走り去った。