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司令官は名古屋嬢 第3話『災難』

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 大須が言葉を続けようとしたとき、山口がいる部屋のドアが開く。ドアの向こうには、疲れた表情のCROSS隊員とテレビカメラなどを構えたマスコミ連中がいた。ドアが開いた途端、フラッシュがたかれる。やってきた隊員は急いで部屋に入り、ドアを無理やり閉めた。そして、近くにいたウィルに何か話した。それを聞き終えたウィルは、彼に後ろから、
『山口少佐、10分後に総会が始まります』
彼はモニターを向いたまま右手を上げ、ウィルの呼びかけに了解する。そして、舌打ちした後、
『とにかく、今回の不祥事の責任は、オレたちCROSSじゃなくて、おまえら中京都軍にあるからな!』
「……はい、わかっています」
大須は静かにそう言った。
『それじゃあ、また連絡する』
彼はそう言うと、通信を切った。モニターには、通信が終わったことが表示されていた。

 通信を終えた後、司令官室は重い空気に満ちた。しばらく、大須と守山は無言のままで、通信していたときのように並んでいたが、大須が守山が立っている右に体の向きを変え、守山を見据えた。守山も気まずそうに大須のほうを向いて見据えた。
「……守山少尉。……処分が決まるまで自宅待機していなさい」
大須は静かにそれだけ言うと、イスから立ち上がって、窓の近くに立って外を眺めた。遠くに、名古屋駅のビル群が見えた。ミッドランドスクエアビルが朝日で反射していた。
「……はい。 それでは失礼します」
守山はそれだけ言うと、静かに司令官室を出ていった。守山は半泣きになっていた……。

 司令官室を出た守山は、エントランスに降りて外の玄関に出た。彼女は車の乗降所を見渡した後、ケータイを使ってタクシーを呼んだ。
 少しすると、タクシーが乗降所に到着した。それに彼女は乗りこみ、運ちゃんに行き先を告げた。
 行き先は彼女の家だった。彼女の家は、昭和区八事にある大きな邸宅で、貿易会社の経営者である父親(今は不在)と、公認会計士である母親と住んでいた。(行き先が遠かったので、運ちゃんは内心嬉しそうだった)

 30分ほど走った後、彼女を乗せたタクシーは、目的地である家の大きな門のところに着いた。彼女はタクシーから降り、タクシーが走り去ると、その大きな門の横にある小さなドアをICカードをかざして開けて、邸宅の中に入った。
 ドアの向こうには噴水付きの広い庭があり、庭の向こうに大きな屋敷があった。その邸宅の玄関の前には、黒塗りの高級車のトヨタの『センチュリー』がエンジンを吹かせながら止まっていた。車の運転席には、専属の運転手が座っていた。
 守山がその車をよけるようにして、玄関に向かっていると、玄関のドアが開き、ドアの向こうから彼女の母親がやってきた。彼女の母親はスーツ姿で、右手に黒いスーツケースを持っていた。すぐに母親は守山に気づき、
「あなたまた問題を起こしたみたいね。そんな風じゃ困るのよね」
それだけ守山に言うと、運転手が開けたドアから車に乗りこんだ。母親を乗せた車はすぐにその場から走り去り、あの大きな門から出ていく。
 その場には、彼女だけが残された……。