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司令官は名古屋嬢 第3話『災難』

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「突入!!!」

 突然、開け放たれたドアのほうから、少女の声が聞こえてきたかと思うと、数人の中京都軍の兵士が突入してきた。その後ろに、声をあげた少女、守山の姿があった……。
 ゲリラ兵は素早く振り返り、突入してきた兵士たちや守山に向かって、何発も撃つ。そのうちの2発の銃弾が、2人の兵士の頭部にそれぞれ命中し、彼らを即死させた。彼女にも、防弾チョッキの肩部分に銃弾が1発当たった。兵士たちはひるんだが、彼女はそのまま前進し続ける。
 そして、両手の二丁拳銃で、必死の形相なゲリラ兵の頭部に何発も銃弾をブチこんだ……。ゲリラ兵はトマトをつぶしたときのように、頭から血を撒き散らせながら後ろに倒れこみ、そのまま即死した……。



「あ〜良かった。服は汚れてないわ」
守山は、自分の服が返り血などで汚れていないかどうかを確認していた。彼女の後ろには、汚れた服を着た死体が5個転がっていた……。
 そのとき、彼女の携帯無線機が鳴りだした。守山は素早く無線機を耳にあてた。
「守山少尉! 窓から落ちた奴がいません!」
その兵士は、この部屋の窓の下の路地裏から連絡していた。さっき窓から落ちた奴を探しているのだった。しかし、少し血が残っているだけで、そいつの姿はどこにもなかった。窓から路地裏までの高低差は3階ほどで、路地裏にはダンボールが散乱していたので、そのまま逃走することができたのだろう。
「今すぐ捜索を開始して。そんなに遠くには行ってないでしょうから、すぐに見つかるわ。……もちろん、見つけ次第射殺ね」
「……了解」
守山は無線機を切ると、ドアの外で待機していた兵士たちに、
「調査と片づけを始めていいよ。私は先に基地に帰る」
「了解です」
守山と入れかわりで兵士たちが部屋に入ってきた。兵士たちは部屋に入るなり、「打倒CROSS」と書かれたポスターをはがし、散らばっている書類をクリアファイルにはさんだり、死体を蹴ったり、金目の物を頂戴したりしていた……。



 部屋を出た守山は、そのままそのビルから出た。ビルの前には、中京都軍と印されたトヨタの『ランドクルーザー』が数台止まっていた。この中京都軍仕様の四輪駆動車は青色の完全防弾車で、上にリモートコントロール式の二連装重機関銃が装備されていた。
「基地に向かって」
彼女はそのうちの1台に乗りこむと、運転手の兵士にそう告げる。
「了解」
守山を乗せた車は、そこから西のほうにある『在京中京都軍練馬基地(旧陸上自衛隊練馬駐屯地)』に向かった。夜空には、不気味に輝く赤い月があった……。道路には街灯がともっていたが、人影や一般車両の姿はなく、中京都軍の兵士や世界保安省の監視員だけだった……。ときどき、サーチライトを点けた監視ヘリ(さきほどのヘリと同型)も見えた。サーチライトは、静かな夜の東京を照らし回っていた……。