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司令官は名古屋嬢 第3話『災難』

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第5章 女の報復



 その日の日没ごろ、司令部の敷地の端にある倉庫と倉庫の間の暗い小道には、守山と白鳥が無言で対峙していた。まるで、西部劇の決闘シーンのようなありきたりなシーンだった……。ただ、荒野のウェスタンとは違い、冷え込んでおり、小雪が舞っていた。

「用があるなら早く済ませてもらえない? 大事な体だから」
先に口を開いたのは白鳥だった。彼女はお腹をさすっていた。守山は白鳥が妊娠していることはまだ知らないようだ。
「用ならすぐに済むわ。それはあなた次第だけど」
守山の顔には怒気がこもっていた。
「…………」
「単刀直入に言うわ。あなたが捕虜収容所の件をチクったのね?」
「はぁ? なんで、そう言えるの?」
「あなたがCROSSのスパイだからよ!!!」
守山は強い口調でそう言った。白鳥は怪訝そうな表情で守山を見ていた。
「前々から、中京都軍の内部に、CROSSの情報部員が入り込んでいるという噂はあったけど、まさかあなただったとはね」
「どこにそんな証拠が?」
「ここに来る前に、ちょっと調べてきたのよ。あなたの通信履歴とかをね」
「…………」
「週に一回はCROSSと直接連絡を取っているみたいね?」
「……私はあんたたちのことを報告していただけよ?」
白鳥は観念した様子でそう言った。それを見た守山は歯ぎしりした。
「穢れた女め!!!」
「……アンタみたいな女に、「恋人宣言」される山口さんも大変ね」
「私は、山口さんのお気に入りの女なのよ! あなたなんか、すぐクビにしてもらえるんだから!」
「本当にそうなの? アンタが自分でそう思い込んでいるだけでしょ?」
白鳥は煽り口調で、守山にそう言った……。
「黙れ!!! この裏切り者め!!!」
「……? 別に裏切ってないけど?」
「マスコミにもバラしただろ!!!」
「……私はマスコミにバラしてないけど?」
「ウソをつくな!!!」
そう叫ぶと同時に、守山は白鳥に右パンチを喰らわせた。そのパンチは白鳥の左肩に当たり、白鳥は後ろに倒れた。
「痛っ!!!」
守山は倒れた白鳥の元に近寄ると、胸ぐらをつかみ、今度は顔を殴る。ジャストミートのグーパンであった。
「痛い!!! やめてよ!!! 私はCROSSの一人なのよ!!! 後でどうなるかわかってるの?」
白鳥の鼻から血が出始めていた……。べっぴんが台無しである。
「そのときはそのときよ!!!」
守山はそう言うと、さらにもう一発おみまいした。
「私は山口さんの子を妊娠しているのよ!!!」
その白鳥の言葉に、守山は動きをピタリと止める……。