ROREPME EHT
山の向こうに沈みゆく夕陽が城を黄昏色に染める。
城の扉が開き、中からスーツの男たちを引き連れたセーラー服の少女がこちらへと歩いてくる。こちらへと近づけば近づくほどわかる色白の目鼻立ちが整った美少女が、私の前で足を止めた。
「あの小さい皇帝のお友達?」
賢治がここではエンペラーで通っているのなら、小さい皇帝というのも賢治のことだろう。賢治は背が低い。
「そうだけど、だったらどうなの」
私の挑発的な言葉に、一瞬少女は細い眉をひそめ、次の瞬間には全く私には興味の無さそうな無表情な顔に戻った。
「早く行ってあげたら?ここではあなたの体が、参加者の命の重さなんだから」
「参加者って何?命って……何なの?待ってよ」
坂道を下りていく少女に叫ぶ。少女の細い背中を追いかけるが、振り向いた少女の鬼の形相に、足が凍りついた。
「うるせぇんだよ、ババァ。全員死ね!死ね!負けちまえばいいんだ。ふはっあはははははははははははははあああああああああああああああああああああああああッッッ」
笑い声が慟哭に変わる。髪を掻き毟る少女の姿に昼間の賢治の姿が重なった。
私は少女から逃げた。狂った賢治に似た少女から逃げ、夢のような城の中へと、駆け込んだ。
作品名:ROREPME EHT 作家名:高須きの