ROREPME EHT
三時間後、25人の親戚、知人、友人がある駅に集まった。強引に呼び出してしまったので一部の親戚は不機嫌を露わにしていたが、賢治は始終にこにこと笑みを絶やさずに、どこから手配したのかマイクロバスに案内した。親戚の叔母はバスの後部にはしゃいだ声を出して勝手に親戚連中を後部座席に集め、私と賢治の友人たちの失笑を誘った。
平日のその日に集まったのは所詮暇な連中だ。突然催された遠足だとばかりに、どこに行くかは気にしていたものの、全員が特に警戒することなくバスの座席に座った。
しかし私は外の見えないバスの窓と見知らぬ屈強な男が複数乗り込んでいることに、一人身震いした。こっそりと賢治に問いただしても何の答えも返って来ない。
「賢治。怖い」
これから待ち受ける何かと、賢治がとても怖い。賢治の手を握ると、賢治も汗ばんだ手で強い力で握り返してきた。
「俺も怖い。だけど俺が、……俺はエンペラーだ」
春分が過ぎ、日が長くなったせいか、午後五時を過ぎても外は明るかった。バスから降りた私たちを待ち受けていたのは、城だった。中世ヨーロッパを思わせる城を見上げ、伯母達と友人の顔に笑顔が零れた。
「賢ちゃんと世那。なんのドッキリ?」
「うん。みんなをご招待」
一行を引き連れて賢治が城に向かって歩いていく。みんなの背中を見送り、私はその場に踏みとどまっていた。すぐ後ろにバスに乗っていた屈強な男が三人いたけれど、彼らは私に何も指示をしない。
私は彼らを振り返る。
「あの。いいですか?」
「どうぞ」
一人が淡々と答える。
「私だけ帰りたいって言ったら帰してもらえますか?」
「エンペラー様の許可があればすぐにでもお送りいたします」
たしか……賢治がエンペラーがなんたらかんたらとバスの中で呟いていた。どうして賢治が『皇帝』なのか。 考えても考えても答えは出てこない。どうして人を集めてこんな山奥まで連れてくるのか。私たちをどうしたいのか。賢治しか知らない。もしかしたらいつの間にか私たちの生殺与奪の権は彼の手に握られてしまったのだろうか。
作品名:ROREPME EHT 作家名:高須きの