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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3

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聖司「義姉さんは……幸せなんだろうか。俺のやっていることは愛なんだろうか。恭介。俺のやっていることは愛か?」
恭介「どうかな。愛かな……。うん。愛なんじゃないかな。だって、相手の幸せのために自分を曲げているんでしょう? それはきっと愛だよ」
恭介「お義姉さんの幸せをいつもいつも考えてるんでしょう。だったら、それは愛だよ。きっと」
聖司「……そう言ってもらえると、少しだけ俺も明日に向かう勇気が沸いてくるよ」

 「うん……」
 小娘は呟いた。
 十一時を越えるというのに、外では蝉がまだ鳴いている。連中は徹夜で鳴き続けるつもりか。
 蚊取り線香の煙がすーっと部屋の空気に溶けていく。
 「こんなもんか……」
 画面の中。キャラの会話はつい先ほど、丸山花世と三神智仁の間で語られたことがベースとなっている。作品は人生の交差点であれば、関係者の台詞や、しぐさなどは当然シナリオにフィードバックされる。それは大井一矢の手法であり、丸山花世の手法。
 「アネキー! できたぜー」
 妹はベランダの姉に声をかけた。美人の女主人はキッチンで糠床をかき回している。それは大井弘子が帰宅と同時に必ずすること。漬かったナスはお茶漬けの添えられる小鉢になる。 
 「あ、ちょっと待ってて、今、見るから」
 エターの仕事が始まってからというもの、イツキも早仕舞いが続いている。もともと今の時期は夏枯れということもあってお客の要りも悪い。丸山花世も店には顔を出していない。
 大井弘子は漬物甕に蓋をすると手を洗っている。
 「三神のにーちゃんとさ、今日、話した内容がそのまま作品になってて……」
 丸山花世は隣の部屋の姉に叫んで話しかけ、姉のほうはそれを聞いている。
 「あのにーちゃんもいろいろと考えてて……」
 小娘は言い、そこでベルの音が響いた。
 「あれ、電話……」
 丸山花世は自分の携帯を取り上げる。だが。小娘の携帯はいつの間にかバッテリーが切れている。鳴っているのはだから、姉のもの。
 「着信音変えるかな。同じような音じゃ紛らわしいし……」