むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3
「……うちのアネキは時々言うよ。人間の評価は四つ。上から順に?正しい?間違ってない?正しくない?間違ってる。?正しくないまでが及第点で、?間違ってる奴は終わってるって」
「……間違ってる奴は終わってる、ですか」
「うん。で、多分、あんたは……そうだね、どんなに辛い点数をつけても?正しくないまでじゃないかな。どんなに辛く評価してもそこまで。?間違ってるとまでは思えないよ。だって、自分のことじゃなくて作品の幸せを考えてるじゃんか」
愛は……自分ではなく相手にあるもの。
愛は自分を思うのではなく相手を思うもの。対象となる相手が実体を持っているかいないかは関係ない。」
「作品が良くなるならば実力のある奴に自分の地位を譲る……それは、多分、愛だと思うよ」
月並みだが愛があれば、ある程度のことは許される。そして、愛がなければどんなことも許されない。
「……そういってもらえると、少しだけ私も前に進む勇気が沸いてきます」
男はまた笑ったようだった。小娘に励まされてどうするという揶揄はWCAの会員の間ではありえない。作品を作る人間はみな対等。手助けができるのであれはお互いに支えあうものだから。
それにしても。
小娘は暗澹たる気持になっている。
エターナル・ラブ。16CCという会社の前途には暗雲が立ち込めていることは間違いない。
○タイニー・エター シーン25 恭介と聖司 場所 海岸 時間 夕方 ■花世
//立ち絵 聖司
聖司「……つまらんところを見られたな」
僕は知っている。聖司が……好きな女の人が誰か。
それはお兄さんの奥さん。
でも聖司のお兄さんは亡くなってしまった。聖司の義理のお姉さんはそれから再婚もしないでいる。
聖司「……良い格好して、な。良い義理の弟演じて」
恭介「……」
聖司「で、たまさかを装って花をとどけてみたり。でも、それでいいのか」
恭介「……」
聖司「本当はあの人を解放してやったほうがいいんじゃないか。花なんか届けないで、あの人を自由にする道を探すべきべきなんじゃないか。そんなことを思うんだ」
聖司「単なる独りよがりなんじゃないかって、そういうことを思うこともある」
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3 作家名:黄支亮