むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3
生意気な小娘は呟いた。でも……多分だが携帯の着信音は変わらない。結局は姉と同じようなベル音。いちいち流行のものをダウンロードすること自体が電話会社の策にはまっている。小娘は誰かに踊らされることを潔しとしないのだ。
「あ、はい、もしもし……」
キッチンで大井弘子が応対をしている。誰か……仕事の関係の人間であるか。
「はい……明日、ですか。分かりました。伺います。十五時半ですね、はい」
丸山花世は耳をそばだてている。やはり……仕事の関係者であるか。
やがて大井弘子は携帯をテーブルの上に置いた。
「花世。また打ち合わせ。明日は16CCに行きます」
女主人の言葉に小娘はなんとはない暗い顔を作った。
「16CCか……」
「……どうかした?」
「それがさー、三神のにーちゃんから聞いたんだけれど……」
話は複雑にして怪奇。さらに言えば、先行きはどうも芳しくない。
「16CCのことなんだけれど……」
小娘はつい先ほど仕入れたばかりの情報を語り始める。間正三郎のこと。市原の薬物のこと。そしてサイゴンプロのラインが抱える問題。16CCはどうも相当に内部が傷んでいる。そのことを姉には伝えておかなければならない。
今宵は少し夜更かしの予感……。
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3 作家名:黄支亮