むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3
だから、自分のところでも小さなエターを作っておきたい。名前を残す努力をしたい。三神の先回りはそういうこと。丸山花世はぼそりとい言う。
「……なんかさ、可愛そうな作品だよね。エターって」
「……」
「一生懸命働いて、働いて……スタッフ食わせて」
作品は人が作るもの。人が育てるもの。けれど、それは凡夫の見方。真の作り手はそう考えない。真の作り手、WCAの会員はこう考えるのだ。作品が人を育てる。作品こそが人を育てる。
「どんどんぼろぼろになって。売り上げも落ちて。惨めな姿になって。それでも……それでもスタッフ支えるために最前線に立たされて」
三神はこたえない。
「おばあちゃんみたいになってさ……それでも頑張り続けて。権利としてあっちに売られ、こっちに売られて……みんなに笑われて。で、市原も越田も最後の最後までエターの骨の髄までしゃぶろうとしてる。気の毒な作品。本当に気の毒だよ」
丸山花世の呟きに三神は応じる。それは腹の底から搾り出すようなうめき声。それは男泣きの泣き声のようであった。
「……まったくその通りです……その通りなのです」
小娘は沈黙し、三神もまたうつむく。
「……私も、本当のところ迷っています。疲れ果てた作品を……くたびれきったエターを解放してやったほうが、本当は作品にとっては幸せなんじゃないか。同人にして生き延びさせようというのは……結局は私のエゴ、独りよがりなんじゃないかと。でも、その通りなのです。ぼろぼろになったエターの姿はあまりにも哀れなのです。このままでは哀しいのです」
「……」
「丸山さん、あなたの眼から見てどうですか。私のやっていることは……愛なんですかね」
三神は顔を上げた。その表情は恐ろしく真剣だった。
「私のやってることは……本当に許されるんでしょうか?」
それは三神がずっと迷っていること。冷酷で冷徹。けれど、迷いがないというわけではない。おかしな男であるが彼もまた人間であるのだ。
大の大人に尋ねられて小娘は閉ざす。言葉を選ぶということを丸山花世も実は知っているのだ。
「愛かどうかは知らんけれど……」
「……」
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3 作家名:黄支亮