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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3

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 文章書きは普通絵描きとは顔をあわせない。文章はイラストの作業には口を挟まないし、イラストは文章の仕事に余計な口出しはしない。それはある種の紳士協定。文章が絵のことにいちいち口をさしはさめば、当然、絵の側も文章にケチをつけてくることになる。逆も同じ。絵がダメだしをすれば、それは当然文章の側も相手のアラを探すようになる。内部で銃弾を撃ち合うようになればチームは瓦解する。そうならないように間に入るのがディレクターでありプロデューサー。お互いの不満をプロデューサーなりディレクターは緩衝材になって吸収することでチームは回っていく。
 「知らぬが仏じゃんか」
 丸山花世はすっかり失念していたコーヒーをひとすすり。だいぶ冷めてしまったコーヒーは当然だがあまりうまいものではない。小娘は顔をしかめた。
 「……そうですか。と、いうことは、市原とは一度しかあってないと?」
 「うん。一度だけ」
 「……」
 三神は一度、目を閉じた。『相変わらず、おかしな仕事の仕方している』とでも言いたいのか。そして丸山花世ははたと思い出した。それは姉が指摘した事実。 
 「あのさー。ひとつ聞いていいかな」
 「なんでしょう?」
 「間正三郎っていう人のことなんだけれど」
 パクリ疑惑で徹底的に粘着されている男。そいつが16CCのチーフグラフィッカーだということは丸山花世もすでに知っているのだ。
 「間ですか……」
 「2ちゃんねるに定期的に罵倒のカキコがあって。で、アネキは、きっと、それを書き込んでいるのは間って奴と昔仕事を一緒にした奴だろうって。なんか、人格的に問題があんの? 間って奴」
 「やれやれ……あなたといい、大井一矢といい……どうして見抜かなくていい事実を見抜くのか」
 三神智仁は彼にしては珍しく弱ったような表情を見せた。
 「その通りです……というのは、書き込んでいる人間が顔見知りだ、ということではなく……といっても、多分、そいつではないかという何人かは私も心当たりがあるのですが、その通りというのは、間という人間が性格的に問題があるという点です」
 「やっばそうなんだ……」
 「職人気質といえば言葉は良いですが……心が弱いのです」
 「……」
 「丸山さん。覚えておいてください。完全主義者は単に、心が弱い人なのです」
 「……」