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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3

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 「お話をしたかもしれませんが友人に、マンガ家がいます。有名な男で、あなたも多分知っている。その男の傑作は、そいつが描いている自分専用のエロマンガです。一度、何ページか特別に見せてもらいましたが、五百ページを超える大作です」
 「……なんか、濃すぎるんだけど、話が。あのさー、私もついていけない領域ってあっからさ」
 小娘は怯んでいる。おかしなプロデューサーは大変な豪腕の持ち主である。そして豪腕プロデューサーは丸山花世のおびえを無視して続ける。
 「その男に言われているのです。自分が死んだら、このエロマンガは公表なんかしないで、自分と一緒に棺おけに入れて燃やしてくれって。絶対に公表するな。これは俺だけのものなんだと」
 「……なー、それ、感動的な話なのか?」
 「それは分かりませんが……私は、その男の生き方に共感します」
 「私はしねーよ」
 丸山花世は言った。もうどうにでもなりやがれ。物書きヤクザはヤケクソ気味である。
 「『作者としては売れて欲しくない。けれど売り手としては売れてもらわなければならない』。そういう葛藤を私に押し付けてくる作品がいい作品なのです。タイニー・エターにもそういう作品になってもらいたい。そういうことなのです」
 「はー……さいでっか……」
 小娘はテキトーに頷いた。まじめにやってると頭がおかしくなりそうである。そして。突然、三神がおかしなことを言った。それまでの作品を語る狂熱はどこかに消え、男の表情は冷酷である。
 「……そうだ。向こうのスタッフとは……つまり、市原たち以外の人間とは会いましたか?」
 突然、壊れたレコードのようにして話題が元に戻ってしまったことに小娘は一瞬だけ惑乱し、だがすぐに立ち直った。
 「ううん。市原という人には一度会ったきりで、この前あんたから聞いた越田とかは会ってないよ。まあ、普通は原画の人とシナリオは会わないよね。私らもともちかって人とは会わないみたいに。お互い会って、あんまり深入りするとおかしなことになるっしょ」