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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3

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 三神はちょっとだけ表情を崩した。エレベーターの扉がようやく開き、そこで三神は言った。
 「この前と同じ会議室のほうに入っててください。コーヒー持ってきますから」
 「あ、うん。分かった」
 丸山花世は言った。ブランセーバーの社内配置のことを全て知っているわけではないが、会議室の場所は知っている。小娘は勝手に部屋に入り込むと、三神が戻ってくるのを待つ。やがて、奇妙な若者は本の入った紙袋とコーヒーの乗ったトレーを携えて戻ったきた。
 「お待たせしました……」
 「あ、うん……」
 男はコーヒーを丸山花世の前に置き、それから本の入った紙袋をテーブルに置き、それから自分も腰を下ろした。そして。男ははっきり言った。
 「非常に満足しています」
 「あ? え? 何が?」
 「お二人の送ってくださったシナリオです。私は非常に満足しています」
 「あ、ああ、うん、そなの?」
 いきなり良し悪しを叩きつけてくる。三神という男はもしかしたら日本人ではないのかもしれない。顔はどうみても日本人なのだが、思考が違う。まず、イエスかノーか。あるいは……それは、本人がまどろっこしく饒舌な文言のあとにようやく『良し悪し』を判定する編集やプロデューサーのやりくちに辟易しているからなのかもしれない。
 「お二人の作品にはとても満足しています。特に、蓮沼つかさをとても気に入っています。ああいう娘がいたら結婚したいと思うぐらいです」
 「え? 結婚?」
 「はい。ああいうちょっとヤンキーで、でも純情という女性が私の好みです。時代遅れなウルフカットも素晴らしい……」
 「ふーん……」
 「ああ、どこかに蓮沼つかさはいないものか……」
 ――こいつも相当おかしなにーちゃんだよな……。
 悩み苦しむ三神智仁を見ながら丸山花世は苦い顔を作る。やはり、天才にまともな奴はいないのか。
 「ああ、それから……」
 恋に悩む三神は不意に真顔になった。
 「主人公をはじめ、キャラは都営三田線の駅名なのですね?」
 「あ、分かった?」
 プロデューサーは謎を簡単に見破ってしまった。
 「まずかったかな?」
 「いや。結構。私もとても気に入っています。特に都営三田線というのがいい。地味で、ですが、重要な地域を走る。都営三田線はいいものですよ」
 「……」