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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3

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 「昔、私がはじめてプレイしたエロゲーの台詞にこういうものがあります。細かい部分は忘れましたが大意はこうです。『薬物を使っても結局は人間は自分以上の実力を引き出すことはできない。だから、薬物を使う意味はないのだ』」
 「……」
 「私もまったくその通りだと思うのです。人間はアルコールの力を使っても、ニコチン、あるいは抗うつ剤の力を利用しても、その人間が持っている能力以上の力は出せない」
 エレベーターのボタンをじっと見つめていた三神はそこでふっと小娘のほうを見下ろした。
 「……大事なことですよ。丸山花世さん」
 「……」
 男は真剣な眼差しで、それが小娘には居心地が悪い。
 「まあ、あなたは大井一矢さんをはじめ、いろいろな先輩に見守られている。ですから道を踏み外すこともないでしょうが。エレベーターが着ました。乗ってください」 
 「ああ、うん……」
 丸山花世は先にエレベーターに乗り、三神はあとに続く。
 「市原は、心の弱い男なのですよ。作り手に対して対抗心を抱いている。自分のほうが偉いと思いたい欲求でしょう」
 「……」
 「プロデューサーという人の中には、時々そういう人がいるのです。クリエイターと同じ目線に立ち、同じ土俵で張り合いたがる人間。本当は自分で作りたい。でも作れないからプロデューサーになり、ディレクターになった。そういう人間は、作品に対しても作り手に対しても拗けるのです」
 ――そういう人間がいることはすでに知ってるよ。
 丸山花世は思っている。」
 「あんたは?」
 「私は違います。私自身、大手のマンガ誌でシナリオのほうで何度か賞を貰ってますから。そういう人間でないとWCAの会員資格はありませんし」
 「……ふーんそうなんだ。あんた、結構やるんじゃんか」
 「そうですね」
 三神は笑ったようである。」
 「あー、だったらさ、あんた、自分でシナリオを書こうとは思わないの?」
 「書きますよ。もしも、お二人の手が足りなくなったら手助けに入ります。でも、そういうこともないでしょう」
 「……」
 「皆さんが頑張ってくだされば私はアイスを食べていられる。そういうことです」
 「……あんた単なるずぼらじゃん」
 「そうです。私はずぼらな人間です」