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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3

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 「エターの豪華本です。これまでの作品の歴史であるとかが載っていて、もしかしたら役に立つかもしれませんから。それとも、16CCのほうでもらいました?」
 「ううん。貰ってない。そういう豪華本なんて」
 「多分そうだと思いました……」
 三神は歩き続ける。丸山花世はそれを追っていく。
 「……向こうはどうですか?」
 「16CC? 特に今のところ問題はないよ。プロット通ってるし。ただ……」
 「ただ?」
 丸山花世は思っている。それはちょっとした不安。
 「うーん……なんかちーっと変なんだよな。向こうのトップの人。市原っていう人?」
 「どんなふうに変ですか?」
 「うん……アネキは、心の病気なんじゃないかって。そんなことを言ってた」
 「ふむ……」
 「昔の部下の人にこういうこと言うの、なんだけど……」
 「見立てとしてはいいですね。さすが、大井一矢。たいした洞察力です」
 「……ってことは?」
 「以前ですが、市原は向精神薬を使っていたことがあるのです。ただ、精神的な疾患を治療するためではなく、あくまで『ファッションのため』と本人は言ってましたが……」
 「え? そんな人なの? あのおっさん?」
 耳にピアスなんかつけて、カタギの人間ではないと思っていたが……。
 「はい。そうです。私は彼がそのような薬物を医師から処方してもらったのを知ってますし、使っているのも見たことがあります。さ、どうぞ」
 三神は言った。すでにブランセーバーが入るビルは目の前。変わり者のプロデューサー殿は食べかけのアイスキャンディーをがりがりとかじると小娘を中に誘った。丸山花世は指示に従う。
 「仕事の時に使うと気分が高揚して寝ないで仕事ができるそうです。私は、そんなもの使うのであれば寝てしまったほうがいいと思いますが」
 エントランスからエレベーターへ。丸山花世は歩きながら首をかしげている。一方三神はアイスの棒を握っている。
 ――見かけも変な奴だったけど……ファッションで抗うつ剤ってなんじゃそりゃ。
 そして。エレベーターを待つ三神は言った。