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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編3

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 美人の女主人はいつの間にかジーンズを脱いでいる。どうも、丸山花世が観察するに、姉はまずズボン、次にストッキング、あるいは靴下と下半身から自由になりたがるようである。心理分析をすればあるいは何かが分かるのだろうか。
 「なあ、アネキ……」
 妹は言った。
 「何?」
 「……ギャルゲー、どんなもんかと思ってたけど、結構、作ってみると楽しいな」
 「そうね」
 大井一矢は笑った。
 作品を作るのは楽しい。それがどんなものであっても。
 物書きヤクザは自分で思うよりもずっと若く未熟であり、また能力がありすぎるのだろう。だから、作品に携わることが時に悲しみにつながることもあるということを理解していない。
 
 翌日。
 学校帰りの小娘は再び品川を訪れることになった。
 丸山花世は数日で夏休みに入る。もっともいつものよう小娘には補講が待っているのだが。
 「暑いな……」
 品川駅の東口から歩いてすぐ。そのすぐの距離がまるでオーブンの中のよう。うだるような熱波に丸山花世はふらふらになっている。見上げれば太陽の野郎はいやに張り切っているのだ。
 ――そんなに気張らなくてもいいのに。
 小娘は顔をしかめ、それから呟いた。
 「三神のにーちゃんも、資料、郵送してくれりゃりいーのに……」
 小娘はぼやいた。おそらく、郵送しないのは三神の側で会って話したい何かがあるからだろうが……。
 そして。敗残兵のようにして歩き始めた小娘に声がかかった。
 「ああ、丸山さん」
 見れば、コンビニの店先に猫背の若者が立っている。変わりものの若造はアイスキャンディーをしゃぶっていた。
 「ちょっと早かったですね……」
 「あんた……仕事は?」
 のほほんとアイスをしゃぶっている若いプロデューサー殿のほうを丸山花世は恨めしげに見ている。
 「ありますよ。今は休憩です」
 「……」
 「ああ、アイス、食べます?」
 やはり三神はちょっと頭がおかしいのだろう。自分が食べかけのアイスを小娘に突き出した。
 「……いらねー」
 「そうですか?」
 三神は不思議そうに言った。
 「それでは行きましょう。お渡ししたい資料がありますから」
 「その資料って、何よ?」