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看護師の不思議な体験談 其の五

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 休日、寮で昼寝をしていた友人のチエ。夏の蒸し暑い中、古い寮ですからクーラーなんてものはないので、窓を全開にし、扇風機の風をガンガン当てながらうとうとしていた。
 ガチャッと扉が開く音が聞こえ、同室の子が部屋に入ってきたのだとチエは思った。
『ちーちゃん』
と呼ばれ、返事をしようとしたが、うまく声が出ない。
『ちーちゃん』
 とっても小さな声。同室の子の声は、こんな声だったったけ、とチエは考えていた。
 それにしても自分の声がなぜ出ないのか。
 目を開けようとしたが、開かない。

ペタ、ペタ、ペタ

 足音が響く。
(ハダシ…?)
 床はタイル様になっていて、ハダシで歩くとそんな音になる。しかし、寮内の床はかなり汚いので、ハダシで歩くなんてこと、誰もしない。

ペタ、ペタ、ペタ

 さすがにチエもぞっとし、それ以上目を開けようとはしなかった。

ペタ、ペタ、ペタ

 ひとしきり部屋の中を歩き回る音が響いた後、扉のほうへと向かって足音が小さくなっていった。
『ちーちゃん』
 声の主は、か細い声でそう言いながら気配を消した。

 チエは恐る恐る目を開けたが、そこには誰もいなかった。
 夢かとも思いながら、汗ばんだ上半身を起こすと、閉めて寝たはずの扉は開けられていた。
「ちーちゃん」
 そう言いながら私がチエの部屋へ入ると、
「ぎゃあっ!」
と、聞いたことのない低い声で叫ぶチエがいた。
 泣きそうになるチエの話を聞き、夏なのに『寒ぅっ!』となった日でした。