看護師の不思議な体験談 其の五
また別の日。
寮は2人部屋で、それぞれのベッド、机、棚があるだけのシンプルな部屋。私は、隣のクラスのエミという子と一緒の部屋だった。
「ほいじゃ、おやすみ」
「おやすみ」
21時30分という早い消灯。しばらくはデスクライトだけで、学校の課題をこなしてから
23時頃にふとんへ入る。
電気を消し、うとうとしているうち、金縛りになった。
(実習で疲れてるからかな…)
私はそう思っていた。実際、実習期間はしょっちゅう金縛りにあっていた。霊的なことには全く鈍感な私は、金縛りは疲労によるものだとしか考えられなかった。
(痛たたた)
そう思いながら過ごしていたが、いつも以上に苦しくなり、徐々に自分の胸の上にずっしりと重みが加わるのを感じた。
(あれ…、なんか変なんだけど)
そう思った瞬間、自分の両肩が突然強い力でグッと押し付けられた。敷きふとんに肩がぎゅっと沈み込むのが感じられ、心拍数が急上昇した。
(痛い、苦しい!)
上手く呼吸ができない。
どれくらいの時間なのか、全然分からなかった。
しばらくもがいたが、体が全く動かない。
(私、このまま死んじゃうのかな…)
そんなこともよぎるくらい、息ができなかった。
そして今度は体が大きく揺さぶられ始めた。
(何、何、地震??)
まるで、ベッドごとガタガタと揺られているような感覚。
ベッドが本当に揺れたのかどうかは分からないけれど、自分の体が揺さぶられているのは本当だった。
(怖い!)
と思った時、突然金縛りはとけた。
息も突然勢いよく肺に入り込んで来た。勢いよく吸いすぎて、大きくむせた。
「ゲホッ、ゲホンッ、ゴホンッ…」
涙目で隣を見ると、気持ち良さそうにすやすやと眠るエミの姿。
(…あれ…?)
怖いし、今何が起きたのか分からず。
「エミ、エミ!ちょっと起きてよ!」
私はふとんから顔だけのぞかせて、大きな声でエミを起こした。
「…何?うるさい…」
「ねえねえ、今、地震あったかね?」
「はぁー?何言ってんの」
軽くあしらい、エミは体を反対に向けて、再びすうすうと寝息をたて始めた。
「……」
呆然としながら、とりあえず私もふとんに入った。
(絶対、夢なんかじゃなかった…)
結局明け方までなかなか寝付けなかった。
学生時代は、本当にいろんなことがありましたが、かなり充実していました。またの機会に、続きをお話ししたいと思います。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の五 作家名:柊 恵二