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大木・妖精の国 1日目 ~ファンタジー(災難)のはじまり~

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 私は3階の、ある大きな木造り(と言っても、ほとんどの建物が木造りなのだが)の家に入れてもらった。そこでは妖精たちがふざけあったり、物が浮遊してあちこち飛び回ったりしていた。
「お帰りなさい、ミーア」
私を連れてきた妖精はミーアというらしい。
「ただいま!ねえ、聞いて聞いて!この人全然臭くないのよ!」
 ミーアが勢いよく流暢に喋りだした。さっきまでとは様子が全く違う事に驚いた。
「そう……やはり私達が正しかったのね!」
そう言ったのは、リーダー格と思われる、山吹色の短い髪をした妖精だった。
「ホントだ、全然臭くない!」
 他の妖精も寄ってきた。なんで匂いの話ばかりなんだろう……
 それに妖精はとても上手に人間の言葉を喋っている。
 あの妖精は演技で私をここに連れてきたって事かな。
 私に助けられた事など全く話さないミーアを見て、きっとそうだろうと思い、イラだった。
「あなたの事は私たちが守ってあげるからね」
 リーダー格の妖精はそう言った。私は全くわけがわからなかった。
 すると、後ろから誰かが建物の中に入ってきた。
「久々じゃない。よくやったわ。」
 赤毛の、カールした長髪の妖精だった。傍にはハンマーのようなものが浮いていた。
 そしてその横には側近と見られる青毛の妖精と、後ろにはボディガードのような妖精が2人いた。
「マーヤ!あんたもこれまでだからね!」
 リーダー格の妖精が、マーヤと呼ばれる赤毛の妖精に向かって怒鳴った。
 マーヤは気分を害したらしく、怒鳴り返した。
「どういう意味よ!」
「この子を匂ってみなさい」
 そう言われたマーヤは不思議そうな顔をしながら、私の近くで鼻を動かした
「う、うそっ!こんな事が……」
 マーヤは私の体を、確かめるように何度も匂っていた。
 リーダー格の妖精は得意そうな顔をしていた。
 マーヤは露骨に顔を歪めていた。切れ長の目が一層細くなっていた。
「こんな事があっていいはずがないわ……」
「マーヤ様、いかがいたしましょう?」
 青毛の妖精が尋ねた。マーヤは青毛の妖精に小声で何か呟いたかと思うと、背中を向けて去っていった。
 それについて護衛の妖精も出ていった。
「一体何なの?私にも説明して欲しいんだけど……」
 私はようやく口を開く余裕が出来たので、説明を求めた。
「これからあなたには役所に来てもらいます。そこで説明しますから」
 と、リーダー格の妖精は淡白に返した。
 私は期待を裏切られた事もあり、少し声を荒らげて言い返した。
「でも私は、助けた恩返しをするって言われて来たのよ?」
「そう。それは知らなかったわ、ごめんなさい。おもてなしは役所の後になってしまうけど、いいかしら?」
 私はお礼をせがんでいるみたいで、それ以上何も言えなかった。
 それ以上にこの妖精は、人の扱いに慣れているといった様子だった。
 私の不満を感じ取ったのか、私をなだめるように、その妖精は笑顔を作った。
「私はリーシャ。よろしくね。あなたの名前は?」


 役所は下から5階層目、つまり一番上にあった。
 枝はてっぺんに向かうに連れて短くなっているから、5階層目はそれほど広くなかった。
 静かで、ほとんどが整った建物ばかりだ。
 隣には、リーシャ。あと他に2人の妖精が私の後ろについていた。
 さっきのマーヤという赤毛の妖精にも護衛がいたが、この国はそんなに物騒なのだろうか。
 それにリーシャ自身、彼女の身長を凌ぐほどの棍棒を宙に浮かせている。

 私達は役所の入り口に来た。
 私が入れる大きさの建物はそれほど多くないが、役所は私が見てもなかなかの大きさを誇っていた。
「連れてきたわ」
 リーシャが言った。衛兵と見られる、揃いの長い棒を持った2人の妖精は、無言で道を空けた。
「さあ、こっちよ」
 何も分からないまま入っていく。
 私とリーシャが衛兵の横を通り過ぎる。
 その瞬間、無言の衛兵が突然持っていた棒を構えた!
「ギャッ!」
 後ろを歩いていた、リーシャの護衛の妖精が2人同時に棒で殴られた。
「きゃあ!」
 私は腰を抜かしてしまった。棒は私の背丈より高く、力で何とかできるとは、まるで思えなかった。
「このっ!」
 リーシャはすぐに棍棒を振り上げる。
 宙に浮いていた棍棒が、勢い良く振り回された!
「ぐあっ!」
 衛兵の一人が棍棒を受け、倒れた!
 その時、もう一人の衛兵が棒を立てて、地面を2回打ち鳴らした。
 すると、奥からもう2人、衛兵がやってきた。
 リーシャは必死に私を守ろうとした。
 しかし3人がかりの妖精には敵わず、なんなく倒されてしまった。
「さあ、来い!」
 衛兵は私に触れた。すると私は宙に浮いて、行動の自由を奪われてしまった。
「ま、待て!」
 リーシャが叫ぶのも虚しく、私は連れ去られてしまった。
 私は手足をぶん回したが、空中に浮いた私がいくら動いても、滑稽な姿を晒すだけであった。なんなく私は『誘拐』されてしまったのだ。

 私が連れてこられたのは一番下、1階層目の隅にある建物だった。
 中には人間サイズとも思える牢屋があり、私はそこに入れられた。
 間もなく、衛兵の姿をした妖精は去っていき、代わりに5人ほど妖精がやってきた。そして私を、さほど珍しそうにもせずに見てきた。
「こいつが新しい人間ね。全く臭くないそうよ」
「本当かしら。でもアレはするんだよね?」
「あたし、あれみたことないの」
「え、ホントに!?」
 妖精達が話している。私には何のことか全く分からない。
「ほら人間、アレしてみなさいよ」
「アレって何よ!」
 私は怒鳴った。
「うんちよ、うんち!」
すると、よほどその言葉が面白かったのか、傍の妖精が腹を抱えて笑い出した。
「はぁ!?」
 私は怒った。何たる侮辱。少女を捕まえてそんな事をさせようとするなんて。
「うんちってすごい臭いがするんでしょ?」
「私嗅いだことあるけど、臭くて死ぬかと思ったわ」
「あれはこの世で最も汚いものよ。最悪だわ」
 妖精がひっきりなしに喋る。
「あんた達だってするでしょ!」
 私は言い返した。
「するわけないじゃない。あんな汚いもの!」
 中央の妖精は言った。私はビックリして言った。
「じゃ、じゃあ何を食べてるの?」
「私達は何も食べない。雨と日光だけで生きられるの。あなた達みたいな低俗な生き物と一緒にしないでちょうだい」
 正直驚いた。
 でも糞をするからと言って、劣っているわけではない。
 そう言いたかったけど、言っても聞きそうな連中では無かった。
「さあ、うんちしなさいよ!早く!」
 私はその言葉に怒って牢を蹴った。大きな音にビックリして妖精達が後ずさりした。
「ふん、どうせその中に居たら、するしか無いんだから。せいぜい我慢していなさい」
 妖精達は一人だけ牢屋番を残して去っていった。
 するとまた間髪入れずに妖精が一人入ってきた。最初にいた青毛の妖精だった。
 とても機嫌が悪そうだった。
 青毛の妖精は牢屋番をしていた妖精に話しかけた。
「リーダーには何か考えがあるらしい。だからとりあえず弱らせておく。どっちにしろ消す事に変わりは無いがな」
 青毛の妖精は壁に掛けていた棒を宙に浮かせ、私の所にきた。