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大木・妖精の国 1日目 ~ファンタジー(災難)のはじまり~

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 消すって、もしかして私の事!?
 私は恐怖した。だがその時、
「にきーたちゃん」
 突然、牢屋番の妖精がニキータと呼ばれる青毛の妖精を呼び止めた。二人の妖精は目を合わせた。
「ああ。そうだったな。但しあの事は秘密だぞ。プーケ」
そのあと、ニキータは舌打ちをすると、棒を壁に掛けて出て行ってしまった。何とか棒で殴られるのは免れたようだ……
 私を助けてくれたと思われる、プーケという妖精は黄色い髪をしており、左右にダンゴ状に髪を結ってある、とても可愛らしい妖精だった。
 その妖精は青毛の妖精が出て行ったのを確認すると、こっちをむいて喋った。
「あたし、うんちみたことないの。みせてくれる?」
 そう言って一人で笑い出した。
 そして、壁に掛けてある棒――の一つ上に掛かってある巨大なハンマーを宙に浮かせて牢の中に入ってきた。
「ねえ?」
 そう言った瞬間、ハンマーを振りかぶり、私の頬に思い切り叩きつけてきた。
「ギャッ!」
 凄まじい痛みが頬を走る。
 私は逃げようとしたが、すぐにその妖精に触れられ、宙に浮かされてしまった。

 その後も妖精は情け容赦なく私にハンマーを叩きつけた。私は血を吐き、何か喋る力さえ失ってしまった。プーケは終止笑っていた。
「ふぅ。すっきりした。のどかわいちゃったなぁ。またあとでくるね」
 プーケはそう言って、ハンマーを壁に掛けて牢屋番もせずどこかに行ってしまった。
 私は自分の運命を呪った。

 夜も深まった頃、プーケが帰ってきた。そして暗がりの中でうつ伏せになっている私を見て、
「やなことがあったの。きいてくれる?」
 と言ってハンマーを宙に浮かせて牢の中に入ってきた。
 それに合わせて、私は伏せていた体を起こした。
「妖精さん。いいもの見せてあげようか?」
「いいもの?なになに?」
 プーケが近寄ってきた。
 私はプーケの顔に投げつけた。

――そう、彼女達曰く『この世で最も汚いもの』を。

「それは私の『うんち』よ!」

 そう聞くと、プーケはビックリした表情のまま固まった。私はその隙を見て牢から逃げ出した。
「ぎええええぇぇぇぇ!!」
 妖精が叫び出す中、私は全力で逃げた。
 あ、言っておくけど、実際に投げたのは靴の底についた泥。
 ほとんど地上に降りない彼女達なら、とっさには見分けられないだろうと思ったけど、上手くいったみたい。
 1階中央のハシゴを渡り、3階の、最初に案内されたリーシャの所まで脇目もふらず駆け抜け、潜り込むように入った。
 リーシャが驚いた顔をして私の方を見た。
「瑠璃!良かった。生きていたのね!」
 私はさりげなく手を洗ってから、事情を全て話した。もちろん汚物を投げつけた事は言わなかったが。
「そう、それは大変だったわね……でももう大丈夫よ。
 明日、役所に行く事ができれば誘拐される事は無くなるわ。それまでは私達が絶対に守るから安心して」
 私が助けた妖精、ミーアが傷を癒す魔法を持っていたおかげで、顔の痛みは治まり、その夜は何とか安心して眠る事ができた。
 一応これで恩返しは受けたけど、何か複雑な気分だ。