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つるさんのひとこえ 4月編 其の一

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「えっと、二百日ほど」
 これも当てずっぽう。
「それもハズレです。先ほどの僕の言葉の中にヒントがあったのですが、気付いていただけませんでしたか」
 ヒント?そんなのいつ言った?
「正解は、三百六十五日、或いは閏年の三百六十六日。そう、一年、三百六十五日もしくは三百六十六日の毎日が何かしらの記念日というわけです。僕たち年間行事部の活動目的は、毎日日替わりでやってくる記念日を黄菊高等学校内に広く深く浸透させ、一日一日を有意義に過ごすことの大切さを知っていただくことなのです。そして本日四月六日は四と六の語呂合わせのヨム日、『読む日』となることから『新聞を読む日』と制定されているのですが、これで今朝、鶴瀬さんがあなたに目をつけられた理由もお分かりになられたでしょう。他にも、今日は城の日やコンビーフの日でもありますがその説明は省きますね」
 なるほど。何となくではあるが、半分ほど理解はできた。というかさっきのがヒントだなんて認めない。認めたくない。
「さて、ここまでで質問はありますか?」
 山ほどある。ような気がする。何かが分からないのだが、分からないところが分からない、そんなジレンマ。
「それでは次に進みます。校内で広く深く浸透させると一言で言っても、それは並大抵のことではできません。僕たちの基本的な活動内容を簡単に分けると、まず一つ目に掲示板にポスターを貼る広報活動、二つ目、昼休みに放送室をジャックしての校内放送や全校集会への乱入といったゲリラ的活動、三つ目が、イベントの開催等の実地活動、そして最後に校内巡視の四つです。ちなみに昨日の入学式後の部長の挨拶は二つ目の全校集会への乱入、従ってゲリラ的活動に当たります。それぞれの活動は実践で覚えていただきますので、よろしくお願いします。まあ当分の間、あなたにはポスター貼りの仕事を――」
「ちょっと待て」
 部長からの中断要請。
「明日の校内巡視、犬島君にも参加してもらおうと思う」
「よろしいのですか?明日の校内巡視は――」
「私がいいと言っている」
「――分かりました。鶴瀬さんがそう仰られるのでしたらそうなのでしょう」
 こうして、僕の年間行事部部員としての初仕事は校内巡視に決まった。
「では本日の部活動はここまで。明日は午前七時半に部室に集合だ。犬島君は入部届を月極に渡してから帰るように。それでは解散。また明日だ」
 そう言うと、脱兎の如く部室を後にした鶴瀬部長。
「そういうわけですのでお先に失礼します」
 と、それに続く鰐木田先輩。
 部室に残された僕と月極さん。月極さんと僕。二人きり。
 さっきまでは他人だった異性と、しかもこんなに麗しい人と二人きりというのは生まれてから十五年目にして初めての経験。
 ええい!落ち着け僕!この入部届を渡してそのまま帰ればいいじゃないか!変に意識するんじゃない!いい匂いがするけど意識するんじゃない!
「あの、これ、入部届、どうぞ」
 差し出す入部届。その時!月極先輩の手が僕の手に――なんてこともなく無事先輩の手に渡った。ちくしょう。
「それじゃあ私もそろそろ帰りますね。戸締まりと整頓、よろしくお願いします。部室の鍵は犬島君に預けるので、明日は遅刻しちゃダメですよ」
「分かりました」
 最下級生らしく健気に窓の施錠と机上の掃除をし、鍵をかける。
 ふと目に入ったドアに貼られた紙が、さっきと違って見えるのはどうしてだろうか。