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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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アイシテルのカタチ

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15

「翔大はここで待ってて」
京介が玄関で相手を迎えている間に、お茶を出す準備を整えた。
京介がリビングへと戻り、テーブルセットへと来客の二人が並んで座る。
京介がその向かいに座り、翔大もお茶を出し終わると京介の隣へと座った。
「翔大。こちらは、鳳堂物産の社主と城崎専務」
鳳堂物産、という名前を聞いて、驚きは隠せない。
でも紹介された二人、特に社主のほうはすっかり恐縮しきっている様子。
本当なら怖く感じたり、怒ったりしないといけないのかもしれないけど、二人の様子を見てると、そういったことは何も感じなかった。
「この子は、城崎さんには前にお話しましたが訳あって私と生活しています明石翔大です」
紹介されて少し頭を下げる。

「宮妹さん、つまらないものですが、どうぞ」
城崎さんのほうが立派な紙袋に入った何かをこっちに差し出した。
「わざわざすみません」
京介さんが受け取った。ちらっと見えた箱には銀座本店とか書いてある。
「せっかくだからいただこうか」
「僕がやるよ」
紙袋を受け取って、キッチンへ。
洋館とお饅頭の詰め合わせで、羊羹は切られていなかったからお饅頭をお皿に綺麗に並べてリビングへ持っていく。

3人は無言で待ってた。
なんだかすっごい居づらい雰囲気。
お皿をテーブルに置いて、席に座る。

「明石翔大君」
突然社主の方が僕の名前を呼んだ。
「この度は、うちの愚女が大変申し訳ないことを致しました」
机に手を突いて、深く社主が頭を下げた。
そうか、社主ってことは、この人はあのお嬢様の父親なんだ。
「この度のことは娘の育て方を誤った私の責任です。謝って許していただけることでないというのはよくよく承知しておりますがどうお詫びを申し上げてよいのやら・・・」
一度も頭をあげずに話すものだから困ってしまう。
「私どもでさせていただけることがあれば、何をする用意もございます」
何をする用意もって、大げさな。
というか、1つの大会社の社主がただの高校生に頭を下げてるって言うこと自体が結構大きなことじゃないか・・・。
京介さんを見ると、目が合ってふと微笑んだ。そして社長さんに向かっていった。
「顔を上げていただけませんか」
社主さんが苦渋の表情で顔を上げる。
「翔大君」
口を開いたのは、城崎専務。
「社主も大変申し訳なく思ってらっしゃいます。亜矢子さんを大変厳しくお叱りにもなりました」
「宮妹さんにご迷惑をおかけしたことも幾度かあったとか・・・本当に申し訳ない。ご迷惑でなければ、後ほど亜矢子にも謝罪にこさせます」
あの人が謝るなんて想像できないけれど、でもお父さんに厳しくしかられて反省してるのなら、それ以上は別に必要ないんじゃないかと思う。
怖い思いはしたけれど、運よく偶然が折り重なって結局未遂ですんだわけだから。
それによく知らない人についていった自分にだって非があるわけだし。

それを拙い敬語で社主さんに伝えると、また恐縮して頭を下げられた。
京介さんの表情はよく見えなかったけれど、きっと自分の決断は間違ってないと思う。

二人が帰った後、また京介の携帯が鳴った。
相手は城崎で、社主のいないところで少し話がしたい、とのこと。

十数分後、再び家のインターホンがなって、京介がそれに応じる。
その間にお茶を入れなおして、迎える用意を整えた。

またテーブルセットに向かい合うように座る。
「なんだかまたお邪魔してしまって申し訳ありません」
城崎さんがそう告げる。
「いえ、社主のいるところではしにくい話もあるでしょう」
「亜矢子さんについて、二人には知っていただきたいと思いまして。あの場でうちの社主が申し上げなかったので」
城崎さんが話そうとしていることが、何となく怖い。
「翔大は部屋にいても良いよ」
それを汲み取ったのか、京介が言う。
「ええ、本当に。そのほうがよければ、是非そうしてください」
城崎もそう言うけれども、当事者は翔大本人だから、京介に片付けてもらうなんてことは避けないと。
「大丈夫です、聞かせてください」

城崎の話は、要約すると亜矢子が社主の家を出たということ。
一向に反省の色を見せない亜矢子に父親が業を煮やして、そういうことになったらしい。
だから、正確に言うなら、家を出た、じゃなくて家を出された、ということになる。
もちろん今までのように金銭的に援助なんてこともないから、これからあの人はお金を稼ぐということがどれだけ大変なのかを学ばなければいけない。
「あの人は、いつかはそういう苦労を学ばないといけなかったんです」
城崎はそう言うけれど、あんな性格でお金なんか稼げるのか。
まじめに働けるような性格には見えないし、一人で生活なんてとてもできるわけないと思う。

「社主が言わなかったのに、私が言うのは反則です。内緒にしておいてくださいね」
それで城崎の話は終わりだった。