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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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アイシテルのカタチ

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14

「京介さん、携帯なってるよ」
「放っておけばいいよ」
でも、着信音はなかなか止まない。
「出てきてよ、午後にこなすはずだった仕事の話かもしれないでしょ」
どうしてここまで気を回せてしまうのか。
もっと鈍感で我侭でかまわないのに。

ベッドを降りて、上着を拾う。
携帯電話を取り出して通話ボタンを押した。
「はい?」
『城崎です。突然ですが、今どちらに?』
「今日はもう帰宅してますが」
『そうですか。もしご迷惑でなければご自宅を訪ねさせていただきたいのですが』
「私の自宅に?ご用件は?」
『予想はついてるでしょう』
「ええ、まあ。いいんですか、私の自宅なんかで。しがないマンションの一室ですよ」
『一向に構いませんよ、こちらから出向くのが礼儀ですから』
住所と時間を確認して、電話を切った。

「誰か来るの?」
電話を聞いていた翔大が問う。
「30分後に人が来る。たぶん2人。翔大は会わなくても良いよ」
「仕事の話ならここで静かにしてる」
「仕事の話ではないと思う」
要領を得ない京介の答えに、翔大も少し戸惑う。
「誰が来るの?」
その質問に、京介は答えない。
翔大に鳳堂物産という名前を伝えるには、あまりにも傷が癒えてなさ過ぎる。
「とりあえず、誰か来るなら片付けないと」
ベッドから置きあがって、すたすたと寝室を出てしまった。
玄関の靴をそろえ、廊下やリビングのものを整理する。
もともとそんなに散らかっているわけでもないから、少し整えるだけ.
台所で来客用のティーセットを出して用意を整えた。
「翔大がやらなくてもよかったのに」
「だって京介さんに片付け任せると何をどこにやったかぜんぜん覚えてないから」

マンションエントランスからのインターホンが鳴る。
京介がそれに応じて、オートロックの開錠をした。
「じゃあ僕は部屋で大人しくしてるから」
翔大がそう言って部屋に引き返そうとする。
「やっぱり、ちょっと待って」
腕をつかんで、引き止めた。
「翔大もいたほうが良いのかもしれない。いたほうが良いと思う。向こうはそれが目的で来るわけだから」
「え?」
「いまさらかもしれないけど、一緒にいてくれない?」
「それはいいけど」
「その代わり、もし一人になりたいとか、ここにいたくないって思ったら、いつでも部屋に戻って大丈夫だから」
「そんな失礼なことはしないよ」
「とりあえず、そうしたくなったらそうしていいってこと。そうした後のことは全部任せてくれて問題ないから」
あまり要領を得ない京介の説明にとりあえず頷くと、部屋のインターホンが鳴らされた。