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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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アイシテルのカタチ

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13

運転手を呼び、翔大を後部座席に横たえる。
車が発進したところで、電話が鳴った。
「城崎さん、さっきはどうも」
電話をかけて着たのは鳳堂物産の城崎専務。
『宮妹さん、さっきのお話がどうにも気になりましてね』
「私からお話しすることは何もありません。鳳堂物産との取引も今後考えさせていただきたい」
冷静さを欠いていることはわかっているけれども言葉を抑えることができなかった。
『ちょっと待ってくださいよ、宮妹さん。まさか本当にお嬢様が何か・・・?』
「信じがたいことをしてくださいましたよ」
『なにをしたんですか?』
「私の大切な人の拉致・監禁。それから一緒にいた男を使っての暴行です」
『まさか・・・』
「暴行も未遂とは言いがたい状況でした。反省されて許そうとは思いませんがそれすらないとは。あんな令嬢をお育てになった社長の人柄も疑わざるをえませんね」
『それは・・・とんでもないことを。私が言うのも変ですが大変申し訳ありません』
「城崎さん、あなたにだって責任がないわけじゃないと思います。私の携帯の番号をあの人に教えたのはあなたでしょう?」
鳳堂物産でプライベートの携帯番号を知っているのはこの人しかいないはず。
『とんでもないっ!どうして私がお嬢様にあなたの番号を教えないといけないんですか』
「私と付き合いのある社員から教えてもらった、と言っていましたよ」
『あなたがそれを信じるんですか。そんなことを私がするわけがない!』
「では、誰が?」
『・・・心当たりがないわけではありません。私の携帯を一度お嬢様におかしたことがありまして。変だとは思ったんですが目を話さないで見張るわけにもいかないので』
「それは、いつのことですか?」
『ご存知のとおり、あのときのパーティの終了後です』
「そうですか、それはあなたを疑って申し訳ありませんでした」
『いいえ、むしろ申し訳ないのはこちらのほうです。それで、宮妹さんはどうするおつもりですか?』
「あの人にはしかるべき処置を受けていただこうと思います。そうしてそちらの社長の罪も重い」
『なるほど、うちとの取引を考えるといことですか。事件が世間沙汰になればうちの業績は格段に落ちるでしょうし、そうすればうちを取引先から切っても不自然はないですね』
そこまで考えてはいなかったけれど、その通り。
『そうなると鳳堂はかなり苦しくなりますね』
「・・・そうですね」
城崎の言わんとしていることは、わかる。もしそんなことになれば、社長のみならず社員の生活も危うくなるということ。
「けれども、あの人がしたことを見過ごすわけにはいかないんです」
『わかっています。少しだけ、時間をください。私の口から社長に事実を申し上げてみます』
その言葉を最後に電話が切れた。
無理を言って、午後の予定をすべてキャンセルさせて、自宅へ。
後部座席を振り返っても、翔大の目はまだ閉ざされたままだった。




暴れるな、といって体を押さえつけられる。
そうして素肌を撫で上げてくる京介さんじゃない人の手。
すごく嫌なのに何もできなくて、なされるがままの自分。
嫌悪感から涙がにじんできて、零れそうになって・・・

「翔大っ」
遠くから呼ぶ声がした。
「翔大、起きて」
さっきまでの光景は一瞬にして吹き飛んで、ゆっくりと目を開ける。
「目が覚めた?良かった、随分うなされてたから」
気づくと部屋のベッドの上。
さっきのは夢だったのか・・・。
「・・・京介さん・・・?」
顔を覗き込んできているのは紛れもない。
「全部、夢・・・?」
校門になんとか物産のお嬢様が現れて、ホテルに連れ去られるなんて。
「そう。全部悪い夢」
京介さんはなだめるようにそう言ったけれども、鎖骨の下についた赤い跡が夢でなかったことを物語っている。
「・・・ごめんなさい」
「どうして翔大が謝るの?」
ほとんど知らない人についていったりして、襲われそうになって。
あの時京介さんが現れなかったらと思うとぞっとする。
まだ夕方の5時なのに、京介がここにいるということは午後の仕事に都合をつけたことは簡単に予想できる。
それを翔大は言葉にしたりはしないけれども、京介には伝わる。
「翔大が気にすることじゃないから」
上着を脱いで、スーツのままの京介が、隣に寝転んだ。
そのまま翔大を抱きしめる。
「怖い思いさせて、ごめん。こういうことするの、怖くなった?」
首筋にキスを落とす。
「・・・京介さんなら、平気」
その言葉を聴いて、翔大に触れようとした瞬間に、脱ぎ捨てた上着から携帯電話の着信音。