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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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アイシテルのカタチ

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12

携帯で鳳堂物産の付き合いのある社員に電話をかけた。同じ専務同士で年齢もちかいことから気のおけない間柄だ。
『はい、鳳堂物産、城崎でございます』
「宮妹です。どうもいつもお世話になってます」
『ああ、宮妹さん。どうしたんです?なんかあわててる様子ですね』
「ええ、それが・・・そちらのご令嬢についてなんですが」
『お噂はかねがねですよ。お困りらしいですね』
「ええ、否定できません」
『それで、私に何かお助けできることがあればご協力しますよ』
「助かります。早速なのですが、プラザホテルで亜矢子さんがいつも使用される部屋はきまってますか?」
『ああ、それならまず違いなくロイヤルスイートでしょうね。お嬢様が何かあったんですか?』
「ええ、好ましい話ではないとだけ言っておきましょう」
『まさかあなたの恋人を拉致でもしましたか?』
冗談半分でそう聞かれたのに、そうかもしれません、と言って電話を切った。
運転手から到着を告げられ、ホテル内へ足を踏み入れる。
受付へ行って、嘘を並べ立てるくらい造作もないことだ。
「すみません、鍵を持たずに部屋を出てしまいまして」
いぶかしむホテルマンを丸め込むほうほうなんていくらでもある。
「亜矢子さんが借りているロイヤルスイートなんですが・・・亜矢子さんは私が鍵を持って出たと思ったらしくて、今は二人して部屋から締め出されてしまった状態です。亜矢子さんもさっきからずっとラウンジにいらっしゃるでしょう?」
部屋の借主の名前を出し、ラウンジで落ちかなげにしている鳳堂のご令嬢を見やると、あっさりとホテルマンは納得した。
「では、鳳堂さまもご一緒にお部屋にもどられますか?」
「いえ、部屋をあけてから私が迎えに来ますので。開けていただけますか?」
「はい、もちろん」
エレベーターへ乗り込み、部屋へと着く。
ホテルマンがカードキーで部屋の鍵を開け、ドアを開けたところで礼を言って、戻らせた。
入ってすぐのリビングルームには、翔大の学校指定鞄。
隣の寝室から何か声が聞こえた気がして、ドアを開けた。

眼を疑った。
衣服を乱されて、涙を流しながら男に組み敷かれている姿。
「翔大っ!」
翔大を組み敷く男が振り向くと同時に、手が出た。
拳を出して人を殴ったのは初めてだ。
ベッドから退いた男から眼を離さないようにしつつも、翔大を抱き起こす。
「翔大?大丈夫?」
「・・・京介さん・・・」
そこに京介の存在を認めて、力が抜けたようにそれだけ言って、翔大の意識は途切れた。

翔大の衣服を整えて、京介が男に向き直る。
『僕を責めないでもらいたいね、黒幕は他にいるのだから』
『黒幕がラウンジでそわそわしていたのを見ましたよ。加担した以上あなたも同罪だ』
しばらく無言のにらみ合いが続く。
『OK、亜矢子を呼ぶよ』
携帯電話を手に取り、電話の向こうへ早口で一言だけ言うと電話を切った。
少し時間がたって、部屋のチャイムが鳴る。
男が部屋のドアを開けに行くのと同時に翔大をリビングのソファへ横たえた。

「・・・京介さん・・・!」
部屋へと入ってきたその人は驚愕の表情で青ざめている。
「どういうことなのか、説明していただきましょうか?」
「・・・私は、何も知りませんわ・・・」
「そんな嘘がいまさら通じるとでも?」
「本当に、私はなにも・・・」
「翔大の友達も、学校まで翔大を迎えにきたのはあなたに間違いないと証言してくれるでしょうね、もちろんそこの彼も証言者だ」
「証言者ってまさか・・・」
「誘拐と未成年者に対する強制わいせつの是認。罰金の額も半端じゃないでしょうね」
「法廷に出る気なの?」
「それだけで許して差し上げるのを感謝して欲しいくらいです。本当ならこの場もただでは済ませたくないほどなのですが、女性に手を上げるのはやめておきます」
京介の声で、部屋の温度が下がったように感じられただろう。
「そんな・・・」
「それとも、このことが笑って許されるほどのことだとでも?」
もはや返す言葉もなく、黙り込んでいる。
「鳳堂さんとの取引についても、徐々に取引額を減らしていく方向で考えさせていただきたいと思います」
「でも、京介さんの会社とは、お互いに取引がなくては困るだろうってお父様が」
「これからはあなたのようなお嬢さんをお育てになられた社長の人となりも疑わざるを得ません。失礼」
厳しく言い放つと、翔大を抱いて、部屋を出た。