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しっぽ物語 3.ラプンツェル

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「ホテルの信用に関わる。今度来たらつまみ出せ」
 自らの言葉が水流に押し流されてしまっても、カーテンの向こうから声は返ってこなかった。
「聞いてるのか」
「ああ」
 大きな吐息と共に答えは返される。
「分かった」
 しばらくの沈黙の後、結局Gは口調をいつもどおりの大人しさに変えた。
「それから、フロアマネージャーから。第三ラウンジのスツールの色はダークブラウンでいいかどうか」
「この前決めたんじゃなかったのか」
「私に聞かないでくれ」
「あー、第三ラウンジか」
 腫れあがっているようにすら感じる脳では、上手くイメージを掴めない。
「テリヤキを出してるのはどこだ」
「それは第二だな。第三は、アイリッシュ・パブ風の」
「なら良いんじゃないか」
 まだ緊張したままの首筋を揉みながら、頷く。
「間違っても黒豹の頭なんか置くなよ」
 いちいちこんなことを、と苛立ちが沸き起こるが、言葉にはしない。たとえ枕の素材やボールペンの種類のような些細なことであっても、内装を変える時は必ずこちらに書類を回すよう指示を出したのは、他ならぬL自身だった。自室の白黒タイルを見たときの衝撃をもう一度繰り返すくらいなら、まだ詳しく手間を掛けるほうがいい。
「それだけか」
 石鹸を探そうと身を屈めたとき、邪魔をする腹に小さな衝撃が走る。最近、ジムに通うのをサボりがちだったツケが、こんなにも早くまわってくるとは思いもよらなかった。
「スロットマシンの入れ替えは、まだ先でいいだろう?」
 キューピー人形に近付きつつある下腹を撫でながら、Lは幾分覇気の無い口調で呟いた。女のところは次の機会に回し、ジムへ行こうか。案だけは出したが、頭は否定する。せめて酒が抜けてから、また今度。
「それで。お前の用事は?」
人影が黄土色の影になり、カーテン越しを横断する。
「そのことなんだが、病院の」
 何かが崩れ落ちる音に思わず身を竦める。鈍い水音、陶器を叩いた時特有のぼんやりとした響きもほぼ同時に飛び込んでくるが、こちらはビニールに遮られてどこかぼやけていた。一番はっきりと聞こえてきたのは舌打ちと、小さく呟かれる、外面の良い彼が公衆の面前では絶対に口にしないような汚い言葉だった。
「どうした」
「落ちた」
 掛けた声と小さな呟きはぶつかりって足元の水に混ざり、排水溝に消える。
「何が」