題名未定
一章:あと4カ月
暑かったあの日も嘘だったように、今はどこか肌寒い。
風も冷たい、そんな11月。
「遼司!」
いつものように、達己は俺を呼ぶ。
いつまでたっても変わらないと思っていた、この関係が壊れるまで、あと4カ月。
…4ヶ月でこいつは、俺の事を忘れて、そして、成長していくんだ。
「どうした達己?」
「んー、宿題やったかなぁと思って」
「宿題?」
どこか申し訳なさそうにそう話す。
聴けば、宿題を忘れたんだと。やってくるのをね。
わざとでは、ないんだと思う。こいつはわざとこういうこと出来るほど器用ではないし。
「写す?」
俺は、ノートを差し出した。
別に写されても構わない。合ってる保証はないけど。
「いや、いい!!結構です」
達己は首と手を横に振りながら、全力で拒否してきた。
じゃあ、なぜ俺に宿題やったか聴いたんだこいつは。
俺は、ノートを机の中へしまうと、
「じゃあ、どうするんだよ」と達己に聴いてみた。
「ここは、正直にやってませんて、先生に言うわ」
「え、それでいいの?」
正直者にも程度ってものがあるだろ。
そもそも、ちょっと間に合わせようっていう努力をしてもいいところじゃないのか。
「その方が気が楽やない?」
「そうか…?やってくるの忘れたけど、間に合わせようと頑張って、でもあと少しで終わるんです。すみません。…くらい理由をつけてもいいんじゃ…」
「おお!そうやん!」
何かを思いついたように、達己は両手をパンと合わせた。
教室に響く、両手を打った音。
そして、自分の机へと帰っていく。椅子に座ると、机の中から、宿題として提出するはずのノートを取り出し、何か書き始めた。
どうやら宿題を始めたらしい。
-単純な奴…
俺はぼそっと呟くと、机に突っ伏した。
ねむい。