昼下り
元々の原因は女にあって、それで親切にされている筈だが
こっちが気を悪くさせたというか、妙な空気が漂った。
だが、女は気にする風もなく相変わらずモニターを見ている。
その横顔は別人のようにスマートだ。
余計に気まずくなったオレはコーヒーカップに手をかけた。
「貰っていいかな?」
「あ?どーぞ」
ニコリとした女の顔は丸い輪郭のせいか愛嬌があり
パーツの一つずつはとても優れている。むしろ残念だ・・・。
オレは気を取り直すようにコーヒーを口に運んだ。
温くなったそれは急激に増加した唾液とブレンドした。
(しゃれてみた・・・・・)
「やっぱり悪いよ」
「えぇ?そう?」
弁償して貰う訳にはいかないと再度告げてはみたが女の動きは
止まらず、再びマウスを握り体を斜めにして座り直した。
その結果、オレの右肘は緑のボールに食い込んでいる。
女は自分の体がどこまであるのかなど全く興味がないらしい。
キーを打つ腕が動く度、柔らかな感触が振動する。
オレは顎を引き知らない内にその伝達域周辺を眺めていた。
「どうかした?」
「んぁ・・・いやぁ・・・」
オレはとっさに顔を上げパソコンを見つめた。
誤魔化すようにコーヒーカップにも手を送った。
久しぶりに見た画面は洋服とは違うサイトが開かれていて
フォームか何かに書き込んでいるようだった。
それも目には映っているだけで、全神経は右肘にあった。
オレの意識もジャンプしていた。