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昼下り

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背を向けた女は、オレの右側から手を伸ばし左手でマウスを操る。
右手はテーブルに置いて前かがみの体を支えている。

肘掛に座って左右の手を入れ替えると更に前のめりになり
体を横に向け、今度は右手でキーを叩き出した。

オレの眼前にはさっきのボールが立ちはだかる。
何かを検索しているようだがボールで画面はよく見えない。

「身長どれくらい?」

女が首を捻ると肩が開き、洋服の画像がチラリと見えた。
どうやらネットショップで弁償するつもりらしい。

オレは好意だけ頂戴する的に何度も断ったが
好みの色や形を聞かれ、すっかりペースに乗せられていた。

何枚も頁をめくり一緒にシャツを探しながら
他愛も無い話に、オレの仕事や家族のことまでも話していた。

人当たりの良さとトゲのない口調に親近感が湧く。
いつの間にか女はオレの横に座っていた。




オレにはずっと気になっていることがあった。気心も知れた頃
一人で来ているのになぜ二人部屋なのかを尋ねた。

「ソファーじゃないと、ゆっくりできないもん」

女は仕事の空き時間が長く仮眠したかったと説明した。
そのあと恥ずかしそうに自分の体型のことを漏らした。

女は太っていた。

マイナスイメージも正直さの前ではプラスに転じる。
納得のいく答えに聞いたオレは気が引けた。

「ふぅ〜ん」

オレは女が傷つくことを恐れた。

作品名:昼下り 作家名:ちゅん