小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

昼下り

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 


お互い様だとオレは女を部屋へ案内してやることにした。

後ろから知らない女が付いて来るのには慣れていないが
部屋番号を聞けば大体の位置は分かる。
オレは番号通りのドアの前で自慢げに振り返った。

すると女は何かを見つけたように近づいた。
目線の方を見るとオレの赤シャツはタイダイ柄になっている。

すぐにさっきの事故でコーヒーが飛んだシミだと気が付いた。
ピンクドラゴンの当時物だ、着て来たことを後悔した。

「ちょっと中で待ってて」

女はそう言うとオレの背中を押して部屋へと促した。続けてパソコン
の前に座らせ、肩に一瞬ポンと手を置き出て行った。
一人にされたオレはソファーの上で呆然とする以外なかった。

・・・ソファー?どうやらここは二人部屋のようだ。




女が濡れたお絞りと新しいコーヒーを持って戻るまで
たいして時間はかからなかった。今度は迷わなかったらしい。

女はオレの前で跪きシャツを摘むとお絞りで染み抜きを始めた。
しかし簡単にはいかない様子で時々シャツが引っ張られる。

初対面の女との接近戦、間接的でもシャツで繋がっている状況だ。
予想外の展開に困惑し、何とも照れくさかった。

「ホントごめんなさい」
「・・・いいよ・・・もう」

すまなげに言う女の上目遣いの目は大きく人懐っこい。
十分に誠意を感じていたオレはシャツのことは諦めた。

女は体を起こしてオレの顔をしばらく直視したあと立ち上がり
収納されたテーブルをつかんでキーボードを引き出した。

化粧の匂いが広がる空間で、オレの思考は低下していく。

作品名:昼下り 作家名:ちゅん