続・聖なる日
此処に来た時にはもう日が暮れようとしていて、下校する生徒の数も少なかった。篠原くんは部活をしているだろうから遅くまで残っているかと思っていたけど、確か天気予報で今日は雪が降ると言っていたから早めに帰っているのかも知れない。
だいたい、私はなんで此処にいるんだろう? 何をしようとしているんだろう? いつの間にかバレンタインのチョコを手作りして、こんな所にノコノコとやって来ていた私は何を求めているんだろう?
(もう少し待って来なかったら帰ろう)
彼に来て欲しいという気持ちと、来て欲しくないという気持ち。どちらが本物なのかも分からないまま、校門から少し離れた場所から下校生徒を確認していた。
「あっ……」
校門から出てきた彼女と目が合うと、私達は同時に小さく声を上げていた。
中学時代はショートカットだった髪がポニーテールになっていたけど、間違いなく彼女は橋本夏美さんだった。
「慶子ちゃん……だよね?」
少し驚いたような顔で私を見つめていた彼女が口を開く。
「うん……久し振り」
「本当に久し振りだよねえ。ちょっとビックリしちゃった」
満面の笑みで私に話しかけてくる彼女。スポーツ少女らしい健康的な可憐さが眩しい。上機嫌で話している彼女を見ながら、(きっと今日はすごく嬉しいことがあったのだろう)と思っていた。
「ウチの学校に何か用? 誰か待ってるの?」
「え?……あの……そうじゃなくて……えっと……」
彼女の質問に対して何の準備もしていなかった私は、しどろもどろの答えしか返せない。
「まあ、いいや。また今度一緒に遊ぼうねッ」
彼女は笑顔でそう告げると、手を振りながら去っていった。