看護師の不思議な体験談 其の参
そんなことがあった夜勤。深夜1時を過ぎる頃。
術後の○○さんの奥様がナースステーションへいらした。今晩は付き添いのために部屋に泊まっている。
「あのー、看護婦さん。」
なんだか浮かない表情。
(どうしたんだろう、術後の状態も安定してるし。疲れたのかな…。)
「どうされました?」
「あのですね、言いにくいんですけど…。」
奥様は言葉を選びながら、つっかえ、つっかえ、話し始めた。
「なんだか、ちょっとおかしくて。なんていうか…。」
「はぁ…。」
内容は分からないが、とりあえず部屋へと向かおうとした。しかし、肝心の奥様が付いて来ない。
「あの…。」
声をかけたが、ナースステーションの前のソファーに座り込んでしまっている。神妙な顔つきで、私の声は聞こえていないようだった。
(まあ、いいか…)
懐中電灯を手にして、部屋へと向かった。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の参 作家名:柊 恵二