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有栖川煌斗
有栖川煌斗
novelistID. 23709
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生徒会長の好きなもの

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第1章 生徒会長は放課後友人に刃物を向ける





「おう。煌斗。今帰りか。」

教室には相良良助(さがらりょうすけ)が残っていた。頑丈そうな体躯をしていて筋肉質の割には所属している部活が文学部というギャップを持つ男。
その男は今放課後の教室で机に座りながら一人の女生徒と対面していた。

「ええ。ちょっと妹に振られちゃいましてね。軽く死にたくなっていたところです。」

「全くお前も飽きないね。お前の妹ってこれといって可愛いわけじゃないと思うがね。」

「……。」

「待て待て待て!そんな無言でカッター取り出すなよ。冗談だって。」

「なんだ冗談か。安心しました。」

無意識につかんでいたカッターを鞄にしまう。

「ふう。まったく妹の事になると人格変わるんじゃねーよ。」

「これは失礼。えっとそちらは3組の工藤恵理子(くどうえりこ)さんですよね。もしかしてお邪魔してしまいましたか。」

先ほどから不思議そうにこちらを見ているので話を振ってみる。

「え、ううん。そんなことないよ。相良君には少し相談に乗ってもらっていただけ。それより会長はなんで私の名前を?」

いきなり話を振られて驚いたのか、少し大げさな手振りで話す工藤さん。

「これでも一応生徒会長ですからね。全校生徒の顔と名前くらいは把握させていただいています。」

「へえ。すごいのね。さすが生徒会長。」

「先日読んだ漫画のセリフですけど。」

「漫画のセリフだったの!?」

「はい。そのセリフがカッコよかったので是非自分も言ってみたいと思って実践してみました。ちなみに今がその初お披露目でした。ありがとうございます。」

実は内心ガッツポーズしていたのだった。

「カッコいいからってそれを実践しちまう生徒会長はきっとお前くらいだろうよ。あんまり面識ない同級生のお前のイメージを壊さないほうがいいと思うがね。」

工藤さんの複雑な表情をみるにどうやら彼女の中にあった俺のイメージが壊れてしまったらしい。

「それでは相談の邪魔をしても悪いですし、僕はこれで。」

「あ、ちょっと待った。」

退室しようとしていた俺に背後から良助の制止が割り込む。

「ちょうどいい。せっかくだからこいつにも相談してみたらどうだ。一応生徒会長なんだし。」

工藤さんを見ながら俺を指差す良助。

どうやら先ほどしていた相談を持ちかけるように打診しているらしい。彼女の方は少し迷うそぶりを見せた後に、

「もし会長がよければ聞いてもらえるかな。」そう切り出してきた。


ああ、妹に早く会いたい。




 彼女が提示した相談の内容は以下の通りである。

 ここ数日彼女の元に送信者不明の不審なメールが届くようになったらしい。それだけなら受信拒否するなり、アドレスを変更するなりといくらでも対策の取りようが考えられる。しかし、現状彼女はまだその対策には出ていないらしい。
 その理由はと言えばメールの内容が不可解であることに起因しているという。

「文面自体は普通の友達同士でするメールなんだけど、誰ですか?って返信しても全然こたえてくれないの。頻度もそこまでじゃないから今までそんなに気にしていなかったんだけど、さすがに怖くなってきちゃって。」

 【やっほー(*^^)v これでいつでもメールできるね。】

 初めてそのメールを受信したときには本当に自分の知り合いだと思って誰かと聞き返したと言う。しかしその問いに対する答えはなく、あくまで友人同士の会話のようなメールを送ってきたそうだ。

 【次は大嫌いな数学(-“-) 恵理子はこれから体育だよね。頑張って(*^_^*)】

文面の内容から我が校の人間であると思った恵理子は周りの人間に送信元のアドレスを知らないかと聞きまわったが空振りに終わったらしい。

 【明日の生徒会選挙誰に投票しようかなぁ☆恵理子はもう決めた(?_?)】

 内容は友好的なものであることから、実害は今のところ全くないが、やはり気味が悪いのだろう。アドレスを変更する前にできることなら送信元を突き止めたいというのが相談目的だった。

 【飛鳥煌斗君が生徒会長当選して良かった(*^_^*)私彼に入れたの。】

 なぜ相談相手が相良良助だったかということだが、彼女は元々小説を書くことが好きで、自分で書いては文学部部員である良助に見てもらっていたという。そしてその流れで一連の事態を話すことにしたらしい。
大体の骨子を話し終えたところで妹に振られ、絶望していた俺が教室に入ってきたという経緯だった。

 「いくら内容が友好的つっても誰かわからん気持ち悪いメールを今まで放置していた事に俺は驚きだがな。」

 と言う良助はあまり驚いた様子はなかった。彼女らしいといったニュアンスが含まれていた。
 しかし、甚だ同感である。普通なら直ぐにでも受信拒否なりアドレス変更なりをしそうなものである。
どうやら工藤恵理子という人間はあまり人の行為を悪い方向で捉えることをしないパーソナリティの持ち主らしい。“頭のネジが一本飛んでいる”というのは良助談である。


 【ねえ、恵理子は好きな人とかいないの?私は…内緒(笑)】
 【校歌の声が小さいから練習するなんて嫌になっちゃうよね。】
 【会長はやっぱり素敵ね。恵理子もそう思うでしょう?】









「さて、では現時点で分っている要素からメールの送り主を推察してみましょうか。」

一通り工藤さんからの事情説明を聞き終えた俺、そして良助は彼女の要求に従い、このメールの送り主を突き止める事になった。

「まずメールアドレスですが、これはインタネット上で取得したフリーのアドレスですね。必要事項を入力すれば幾つでも入手できますし、メールの送り主にしてもその辺は一番気にする処でしょうからここから辿るのは難しそうですね。」

 アドレスからの探索は既に工藤さん本人も試みて失敗している。

「まあ、そのことには異論ないんだけどな。」

良助は腕を組んで思案顔をしながら呟く。

「おや、何か含みのある言い方ですね。」

「いや。ただこのメールの送り主はどう考えているんだと思う?こいつは本当に正体を知られたくないのか?それにしてはなんかこう自己顕示的な発言のメールが多いと思うんだが。」

なかなかどうして、良助という男はその体育会系の容姿に反して(偏見であることを認めよう)直情的ではなく多面的な思考をしようとする。彼と知り合ったのは今年の春だったが、体よりむしろ思考を働かせる方を好んでいる印象がある。

「そうですね。その辺をまず検討してみましょうか。」

「そうだな。このメールの送り主―」

「あの。ちょっといいかな。」

良助の言葉を遮って工藤さんが口をはさむ。先ほどから何か発言したいことを我慢しているようだったが、ついに口に出す決意をしたらしい。話を止められた良助は少しめんどうそうに「なんだよ。」と聞き返す。

「『メールの送り主』じゃ分りにくいから、何か名前つけない?」

「どうでもいいわ!」良助の一喝。全面的同意。

「えーだって長いし言い難いよ。」

「ああ、もう。じゃあ『犯人』でいいだろ。迷惑してんだし。」