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有栖川煌斗
有栖川煌斗
novelistID. 23709
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生徒会長の好きなもの

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 加藤沙織(かとうさおり)が初めて生徒会長、飛鳥煌斗を見たのは春の入学式である。
生徒会の役員として式を運営しているところだった。
初めて見た時、なんて綺麗な人なのだろう、と思わず沙織は息を飲んだ。
一瞬女生徒かと勘違いしてしまったくらいだ。
 肌の色は白く、腕や足も女の子のように細い。周りにいるどの女生徒より目が大きく髪の毛が綺麗だということが遠くから見ていた沙織にも感じられた。
女の子より綺麗でそれでいて男らしい。煌斗の放つオーラは明らかに周りから浮き出ていた。孤立していたといってもいい。
沙織にはそれがとても儚く感じられた。幻のように次の瞬間自分の視界から消えていなくなってしまいそうだと思った。そして入学式の間彼から目を離せなかった。
 恐らくそれは周りの子も一緒だということも沙織には分った。

「あんなカッコいい人がお兄さんでしかもシスコンだなんてうらやましいくらいだけどなあ。」

それだけにさきほど妹の雲雀に対する煌斗の態度を見た時沙織は思っていたよりも衝撃をうけた。沙織の中で遠くから見る煌斗は一種のキャラクタになってしまっていて、現実感に乏しい存在だったのだ。


「それは当事者じゃないから言えること。隣の芝は青い。」

「てゆうか会長ってヒバリンのこといつもストーカーしてたりするの?」

「いつもなわけないでしょ。特に最近は生徒会の仕事で家に帰ってくるのも遅かったしね。それでようやく時間が空いたからそれに託けたんでしょ。違う芽李美?」

「多分その通りでしょう。今日は朝から何やら落ち着きがなかったですからね。煌斗さんがああいうときは間違いなく雲雀さんの事を考えているときですから。」

「もしかしてまだついてきてたりして。」

沙織は期待のこもった表情で後ろをうかがう。

「それはありませんわ。」芽李美が断言する。

「どうして?」

「ついてこないでってはっきり言ったからね。それでも無理についてきたりは絶対しないのよ。あの馬鹿兄は。」雲雀が答える。

「へえ、さすが妹。芽李美はさすが副会長。」

「わたくしは中学でも雲雀さんと一緒でしたから。それで多少煌斗さんの事にも詳しいだけですわ。」

「でもそんなに妹LOVEじゃあ家でも大変なんじゃない。」

そもそも沙織には彼が普段どんな生活をしているかさえ想像できなかった。

「まぁそれなりにはね。でも家にはもう一人被害者がいるから私はわりと平気なの。特に今はね。」

「もう一人の被害者?」




「そう。一番下の妹。飛鳥京香。現在絶賛引きこもり中。」
 俺は一度教室へ戻っていた。考えてみれば鞄を教室に置いたままだったのだ。そうとう浮足立ってしまったらしい。