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分岐点 (後編)

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坂木さんの家には何度か来たことがある。1階に台所やリビング、2階に寝室と家族それぞれの部屋がある。さすが、病院長の家だけあって、やたら広い。
―どこから探したらいいのか
立ち尽くしていると、頭上から小さな物音が聞こえた。じっと耳を澄ますと、かすかだが音がする。
―誰かがいる。
ゆっくり足を進める。2階へ上がる階段まで近づいた。
見上げると、一番上の段は暗くてよく見えない。目を細めるが、やはり暗くて、どこまでも階段が続いているようにも見える。
―怖い
―この上に何があるのか
大きく深呼吸する。
両手を拳にし、目いっぱい力を込め、階段を一段ずつ昇る。
段を昇るたび、確実に恐怖に近づいていくのを感じた。

作品名:分岐点 (後編) 作家名:柊 恵二