分岐点 (後編)
自分によくこんな気力と体力が残っていたものだ。
もと来た道を転がるように、走り続ける。
何度か見たクリスマスツリーのイルミネーションが視界に入り始める。遠くからでも、よく見える鮮やかな光。
見上げると『坂木病院』の看板も緑色に光っている。あちこちの窓には明かりが灯っていて、まだ患者やスタッフたちのパニックが続いているのだろう。
それをチラリと横目で見ながら通り過ぎる。
―竜輝はここじゃない
自分が犯人だったとして、自分の職場に子どもを隠すことはしないだろう。
いつ見つかるか分からないような、そんなリスクを背負うわけがない。
―外来で会った時の、息子の雅也君の反応…、明らかに何か隠していた。
―あれは、母親をかばってるからだ
―だとしたら、やっぱり竜輝の居場所は…
考えながら、坂木病院に隣接する、大きな住居までたどり着く。
『坂木』と書かれた立派な表札を見つめる。
―でも、どうして坂木さんがうちの子を…
考えてもしょうがなかった。自分の目で確かめるしかない。
大きな門に足をかける。長靴を見つけたときと同じように。
―待ってて、竜輝