分岐点 (後編)
あの1週間の出来事は忘れられない。
忘れたことはない。
夢だったのではないかと思うくらい、非日常的な出来事の連続だった。
しかし、自分の体のあちらこちらに青あざや瘡蓋といった証拠が残っている。
―ああ、夢じゃなかった
―現実だったんだ
傷を見ては、恐怖を思い出す。
唯一救われたのは、竜輝はほとんど眠らされていたため、雅也君が自分に何をしたのかを知らないことだった。
「雅也君はね、お勉強のために、ちょっと遠くに行ってるんよ。」
そう説明すると、とてもがっかりしていた。
「どこに行ったの」「いつ遊んでくれるの」「お兄ちゃんがいいよぅ」
毎日のように聞いてくる。
竜輝の中で、雅也君はずっと憧れの存在だ。それでいい。