分岐点 (後編)
もう二度とあんな経験はしたくない。
竜輝や千恵の笑顔を見るたび、心から思う。
雅也君や坂木さんから受けた異常な行為も怖かったが、それよりも、竜輝がいないという現実がとにかく怖かった。
私のそばに子どもがいないなんて、…あれほど恐ろしい思いはもう二度としたくない。
あれから竜輝はしばらく入院したが、外傷はなく脱水と栄養不良だけだったので、回復は早かった。
何かを思い出すのか、夜中になると火がついたように泣き出すことがあった。
ほとんど薬で眠らされていたらしいが、暗闇に閉じ込められていた子どもの恐怖といったら尋常ではなかっただろう。
退院してからは、今まで以上に甘えん坊になったが、それも仕方ない。いや、私のほうが竜輝に甘えているのかもしれない。