分岐点 (後編)
一月二十八日(金)
あれから1ヶ月が過ぎた。
「かーちゃん、靴が履けんよ~。」
玄関で情けない声を出す竜輝。
杉川家は何もなかったかのような、いつも通りの朝。
けれど、あの出来事を忘れたことはない。私の生き方を大きく変えた出来事。
坂木さんは、腹部の傷が大きく、一命を取り留めたものの、未だ警察病院に入院している。治療をしながら事情聴取や精神鑑定を受けているそうだ。
雅也君は未成年ということもあり保護施設へ送還されたが、突然暴れるなど、まだ精神状態が落ち着かないらしい。
雅也君の父親は、すっかり生気をなくし、仕事どころではなくなった。しかし入院患者を放り出すわけにはいかないので、急遽臨時の医師に診察や経営を依頼したが、事実上病院を手放していた。