分岐点 (後編)
「かぁーちゃぁん、とぉーちゃぁーん!」
真っ暗闇の中、どこからか明るい声が響く。千恵の声だとすぐに分かった。
見ると婦人警官に抱いてもらっている千恵がいた。
啓一が千恵を警察官に預けていたらしい。
「千恵ちゃん、お兄ちゃんだよ。」
千恵は不思議そうな顔をしている。
「お兄ちゃん、ねんねしてるねー。」
そう言いながら、千恵は竜輝の頭を撫でてくれた。
私は竜輝を抱いたまま、啓一は千恵を抱き上げ、救急車へ乗り込んだ。
振り返ると、坂木家の門が見える。
パトランプによって、赤色に染められる。
―クリスマスのイルミネーションのようだ…。
そう思っていると、救急車の扉が大きな音をたてて閉められた。
恐ろしい世界からやっと開放されたのだ。