分岐点 (後編)
その後、坂木さんは救急車へ、雅也君はパトカーへそれぞれ乗り込んで行くのを見た。
坂木家を一歩出ると、さっきまで私を凍えさせていた雨がやんでいた。
その代わり、ふわりと白いものが目の前に落ちる。
見上げると、真っ黒な空から無数の小さな結晶が降っていた。
そういえば、日付も変わってクリスマスイブだ。
そんなことを、ぼんやりと考えた。
「竜輝、雪降ってるよ。」
私の腕の中で、竜輝がうっすらと目を開けた。
私の声に、口元を緩める竜輝。
「竜輝、竜輝。」
竜輝の頬に自分の頬を摺り寄せた。
―暖かい
竜輝が生きている。
そんなこと、当たり前に思っていた。
子どもが生きていることが、こんなにも嬉しいことだなんて。
目の前にある命を、力強く抱きしめた。