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分岐点 (後編)

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目の前の隙間から、真っ白な腕がするりと入り込んで来た。
「ぅわぁっ!」
思わず、一歩後ろへ下がる。
その白い腕はゆっくりと動き、扉が閉じないように押さえるとぴたっと動きを止めた。
目が離せず、それは人間の動きには見えなかった。
寒さのせいか、もともとなのか、真っ白な手の甲。
チェーンは変わらず、ピンと張ったままだ。
「夜分遅くにすみません。」
その声にハッとする。
近づくと、その白い腕の持ち主は瑞樹の言った通り、坂木さんだった。
いつもの笑顔。
ただ、隙間から覗かれるその笑顔は顔に張り付いたように動かない。
人形のようだった。
「…あの、何か御用でしょうか。」
できるだけ冷静に、こちらの焦りが伝わらないように、聞き返した。
「奥様が病院から抜け出してしまったんです。管理不足で大変申し訳ありません…。」
「いえ、うちにちゃんと戻ってきましたので。とりあえず、もうこのまま…。」
「いいえ!そういうわけにはいきません!奥様は病気なんです!」
強く、はっきりとした口調に圧倒される。
―この人はこんなにも大きな声を出すことができるのか。

作品名:分岐点 (後編) 作家名:柊 恵二