分岐点 (後編)
「お母さん。」
雅也君は彼女に近づくと、その振り上げた手を握って、ゆっくりと降ろさせた。二人の刑事も最後の親子のやり取りを見守っているのだろう。じっと動かない。
「雅也、母さんは、あなたのために…。」
彼女の唇は小さく震えている。
雅也君はじっと母親の目を見つめ、そして口を開いた。
「お母さんはいつも僕のためだって言う。」
私は雅也君の何かがおかしいと感じた。
「でも、いつだって僕のためじゃなくて、結局は自分のためだったでしょう?」
雅也君は彼女に一歩近づいた。
「もう、うんざりだった。」
ハッとした。
「雅也君、ダメ!!」
刑事達も気づいたが、遅かった。
さっきまで彼女が持っていたハサミは、雅也君の手によって彼女の腹部に突き立てられていた。