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分岐点 (後編)

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彼女がしゃがんだまま、何かを握り締めたのが見えた。
いつからそんな物を用意していたのか。
突然立ち上がった彼女の手には、大きな裁ちばさみが握られている。
「アアアアアッ!!」
彼女は大きな奇声とともに、両手を振り上げた。
私は啓一にしがみついた。啓一は私をかばうように抱きしめる。
―もうダメだ…!
そう思った瞬間…。
「…お母さん!」
はっきりとしたその声に、彼女の動きがピタリと止まる。
振り上げたその手には、まだ凶器が握られたままだ。
見上げると、刑事たちが私たちをかばうように立ちはだかっていた。
オレンジ色に照らされた刑事たちの背中はとても大きく見える。
そして、その声の主は、さっきまで隅で小さくなっていた雅也君だった。
彼女のそばに立つその姿は、いつもの雅也君に見える。
「坂木雅也君だね?」
若い林刑事が尋ねると、雅也君はうなづいた。
「お母さんと一緒に、警察まで来てもらえるね。」
雅也君は、うんとうなづいた。
こんな非常時なのに、やっぱり雅也君の表情はきれいに見えた。

作品名:分岐点 (後編) 作家名:柊 恵二